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F・マリノス、悲願達成へ。齋藤学が誓う「10年前の再現」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

2013年Jリーグ
頂点争う「3強」のキーマン(2)
横浜F・マリノス編

 降りしきる雨の中に浮かぶ煌(きら)めきを、齋藤学は網膜にしっかりと焼きつけている。

 2003年11月29日。Jリーグセカンドステージ最終節を迎えて、ファーストステージ覇者の横浜F・マリノス(勝ち点23)は、ジュビロ磐田(勝ち点26)、鹿島アントラーズ(勝ち点24)、ジェフユナイテッド市原(現・千葉/勝ち点23)と"四つ巴"の優勝争いを繰り広げていた。

 F・マリノスは、横浜国際競技場で首位のジュビロと対戦。優勝の条件は「第一に勝利」という状況にありながら、ジュビロに先制点を献上し、さらにGK退場という苦境に追い込まれていた。後半が始まって同点としたが、刻々と時間は過ぎていった。その間、「アントラーズ、リード」の報が伝わり、絶望感が滲(にじ)む。

サンフレッチェ広島との首位攻防戦でも結果を出した齋藤学。サンフレッチェ広島との首位攻防戦でも結果を出した齋藤学。 そして、ロスタイムだった。アントラーズが浦和レッズに同点ゴールを奪われるのとほぼ同時に、F・マリノスは「ドラゴン」久保竜彦のヘディングシュートで逆転に成功した。最終的に勝ち点(26)は、東京ヴェルディに勝利したジェフ、そしてジュビロと並ぶも、F・マリノスが得失点差で上回って頂点に立った。

「優勝する、強いF・マリノスを見られたのは、本当に良かったですね」

 当時、F・マリノスの下部組織に在籍し、ボールボーイをしていた齋藤はそのときの心情を吐露している。

「諦めずに戦うことで、こんな感動が得られるんだって。その感覚は今も心に残っています。だから、(今の)F・マリノスのサポーターや下部組織の選手たちにも、そういうトップチームの姿を見せたい。今度は自分の番だって」

 2013年シーズン、F・マリノスは第30節に大分トリニータを1-0で撃破し、首位を走っている。残り4試合。23歳の斎藤は、10年前の感動を再現することができるのか。

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