ザックジャパンを支配する閉塞感の正体 (2ページ目)

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 代表戦はプレッシャーも大きいし、アウェーだと相手のレベルや対戦する選手の本気度が、ホームで戦うときよりも高い。そうした状況で、自信を持って堂々とプレイするのは簡単なことではない。長谷部に以前のような前線にボールを運ぶ推進力が見られなかったり、ちょっとしたミスが目立ったりするのは、そうしたことが原因なのではないだろうか。

 実は私自身も、1993年、「ドーハの悲劇」と言われるW杯アメリカ大会・アジア最終予選で同じような経験をした。つまり、当時、所属クラブの浦和で不調だったため、そのコンディションの悪さが代表でのプレイにもそのまま出てしまった。だから今、長谷部や吉田がどういう心境、どういうコンディションでプレイしているか、少しは分かるつもりだ。では、自信と本来のプレイを取り戻すには、どうすればいいか。それは結局のところ、クラブで試合に出て安定したパフォーマンスを発揮するしかない。

 長谷部は移籍して、試合に出られるようになった。そう考えると、香川や吉田も、冬の移籍市場で試合に出られるクラブに移籍するという選択肢を持っておいたほうがいいのかもしれない。

 また、2試合とも無得点に終わった攻撃面では、深刻な問題が生まれているように見える。

 香川はボールに触ろう、触ろうとして左サイドから中央に入ってくることが増え、本田圭佑も、ワントップの柿谷曜一朗を活かそうとしているからか、中央からのスルーパスが多く、中央偏重の傾向が強まっているように感じる。

 その結果、日本のストロングポイントだったはずの遠藤保仁、長友佑都、香川、本田による左サイドからの崩しがほとんど見られなくなってしまった。極端に言えば、本田と香川、柿谷の3人だけでゴールを奪おうとしている印象がある。

 たしかに日本は「パスワーク」や「ポゼッション」が武器だとは思うが、バルセロナやスペインを見ても分かるように、ドリブルでの仕掛けや、ピッチの横幅をフルに活用したサイド攻撃もなければ、相手の守備ブロックはそう簡単には崩せない。サイドから攻めるからこそ相手の守備ブロックが左右に広がり、中央にスペースが生まれるものだ。

 セルビア対日本戦と同じ日(10月15日)に行なわれたスペイン対ベラルーシ(W杯欧州予選)の映像を見たが、世界王者のスペインでさえ、中央からの攻撃が多かった前半は、ベラルーシの固い守りを崩せなかった。スペインが優勢になったのは、ペドロとヘスス・ナバスをサイドに張らせて、サイドを有効に使うようになってからだった。

 この試合でのスペインと同じように、日本ももっとサイドを有効活用する必要があるだろう。今は「自分たちのサッカー」にこだわり過ぎて、パスをつなぐことにばかりに意識がいっているように見える。

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