好調マリノスの「顔」。中村俊輔が輝きを取り戻したワケ
相手のプレッシャーを抑えて、巧みなボールコントロールを見せる中村俊輔。名波浩の視点
Jリーグ第9節では、2位の横浜F・マリノスと4位の鹿島アントラーズが対戦。ともに自分たちの良さを出すというよりは、相手の良さを消すサッカーに徹して、1-1の引き分けに終わった。
際立っていたのは、90分間を通して充実していた両チームの守備。とりわけ、敵への寄せの速さと、セカンドボールへの予測の速さが光っていた。互いにその反応が速いから、激しくボールを奪い合って、ルーズボールからルーズボールへ、というシーンが非常に多かった。結果、ボールが落ち着かず、ともになかなか決定機を作れなかった。
そして、極めつけは、帰陣の速さだ。この点に関しては、2チームともにリーグトップクラス。それぞれ、ボールを奪われたあとの反応が素早くて、相手に付け入る隙をまったく与えなかった。
こうした守備面において、今季のアントラーズは、より洗練され、鍛えられた感があるが、対するマリノスもアントラーズに引けをとらない守備力を見せた。今季、開幕6連勝と絶好のスタートを切って、2位という好位置にいる要因は、そんな高いレベルのディフェンスが実践できているからだろう。
昨季は、開幕7戦勝ち星なし、と最悪のスタートだったマリノス。原因は、選手の体が動かなかったからだ。ハイプレッシャーをかけるアグレッシブさはなく、攻守が分かれて2ラインになることが多かった。空いたスペースを相手につかれて失点を重ね、そのまま結果が出ないことで気持ちも落ち込んだ。まるで負の連鎖のように、体、技術、精神面と、すべてがマイナスに傾いて低迷した。
しかし今季は、昨季の失敗を受けて、コンディション調整がきちんとできている。それも、スタッフの力によって、試合に合わせてうまくコントロールされている。だから、選手たちの動きが格段にいい。頭の中もすごくクリアな状態にあって、動きにキレがあり、迷いがない。
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著者プロフィール
名波 浩 (ななみ・ひろし)
1972年11月28日生まれ。静岡県藤枝市出身。1995年、ジュビロ磐田に入団し一時代を築く。日本代表では10番を背負い初のW杯出場に貢献した。引退後は、ジュビロ磐田のアドバイザーを務めるとともに、テレビ朝日『やべっちF.C.』などサッカー解説者として活躍