2013.04.01

【フットサル】木暮賢一郎
「選手じゃない立場でやりたいことが出てきた」

  • 北 健一郎●取材・文 text by Kita Kenichiro
  • photo by AFLO SPORT

フットサル日本代表のエースとしてW杯に3度出場した木暮賢一郎 “フットサル界のキング”と呼ばれた男が引退した。木暮賢一郎、33歳――。3月24日に行なわれた引退試合の模様は、「やべっちFC(テレビ朝日系)」でも放送された。短い時間とはいえ、全国放送のサッカー番組で引退試合が取り上げられたフットサル選手は木暮が初めてだ。

 木暮は昨年11月、”カズ”こと三浦知良も出場したフットサルワールドカップに出場。キャプテンとして日本フットサル史上初のベスト16入りに貢献した。代表チームのキャプテンだった選手が半年後に引退を決める。決断の裏には何があったのか。木暮本人が明かしてくれた。

「引退を決めた理由はいくつかあります。一番大きかったのは日本代表に呼ばれる可能性がなくなったことでした。ワールドカップでウクライナに敗れた試合後の夜、ミゲル・ロドリゴ監督が大会の総括をしているときに『私が代表監督を続けるのであれば、今回が最後になる選手がいる』と話し始めたんです」

 ベスト16という結果を出したことで、ミゲル監督の続投は濃厚と言われていた。ミゲルが監督をやっているうちは、代表に入る可能性は限りなく低くなる。木暮は緊張しながらミゲル監督の言葉に耳を傾けた。

「僕、スペイン語がわかるので通訳が話す前にわかったんです。そうしたら僕のことも言っているのが聞こえて、『うわー』と。スペインでは文化というか、こういうやり方をするんです。長くやってきた選手へのリスペクトを表す意味を込めて、監督が『もう呼ばないよ』と伝えるし、選手も自分で代表を引退するというスタイルなんです。だから、ミゲルに対して怒りとかっていうのはまったくないですし、あのタイミングで言ってくれたことで、次への道を考えるきっかけになった。それがなかったら、まだ迷っていたかもしれません」

 木暮はシーズン終了後に所属クラブ、名古屋オーシャンズとの契約が満了することになっていた。Fリーグは名古屋だけが完全プロチームで、他のチームは基本的にはアマチュアだ。木暮が他のチームに移っても、名古屋のときのようなプロの環境は望めない。「プロでなくなること」。これも木暮が引退に踏み切った理由の一つだった。