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【日本代表】ザッケローニ監督が本田中心のチームをつくる理由 (3ページ目)

  • photo by FAR EAST PRESS/AFLO

 たとえば1994年W杯アメリカ大会で、ブラジル代表はロマーリオとベベットの2トップだったが、このふたりは仲がいいとは言えなかったという。しかし、このふたりが活躍して、優勝という結果につながった。対抗意識、ライバル心というのはパワーを生み出す要因にもなるということだ。それがマイナスの方向に出てしまうと最悪だが、それをいかにプラスに持っていくかも監督の仕事。あえて相性が悪い選手ふたりをピッチに送り出し、化学反応を起こすというやり方もある。それが難しいところでもあり、面白いところだろう。

 ザックジャパンの選手間の相性ということでは、トップの前田遼一とトップ下の本田圭佑の関係性はとてもいい。私がそう思う理由は、まわりのプレイに合わせることができる前田のキャラクターだ。前田は、非常に積極的な性格の本田にとって一番やりやすい選手なのではないかと思う。これは本田に限らず、誰と組んでも前田はやりやすいと思ってもらえるプレイヤーだろう。

 前田は、技術、戦術理解度、経験も含めて、すべてにおいて非常に高い能力を持っている。それにも関わらず、エゴがない。Jリーグで得点王を取っているストライカーでありながら、エゴイスティックなプレイスタイルではない。言い方を変えると、自己中心的ではなくて、チームの勝利のためにプレイできる選手であり、汗かき役もできる。

 同時に、前田のような献身的なプレイをする選手だけではダメで、クライフ監督時代のバルセロナが、ロマーリオやストイチコフ(ブルガリア代表)のような「問題児」と言われる選手を起用していたように、エゴを前面に押し出す選手も置いておかないと、ある種の毒がなくなってしまう。つまり怖さがなくなってしまう。

 そういうこともすべて含めてのチームバランスなので、それをどう考えるか。その意味では、ザックジャパンでは本田という存在が化学反応を起こすためのカンフル剤になっていると私は思う。左の香川、右の岡崎、ワントップの前田。彼ら3人の中央に、トップ下の本田がいるので、いいバランスで攻撃ができている。だからこそ、ザッケローニ監督は本田を中心にしてチームを構築しているのではないだろうか。

著者プロフィール

  • 福田正博

    福田正博 (ふくだ・まさひろ)

    1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。

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