【Jリーグ】
37年ぶりの天皇杯優勝。柏が備えつつある「強豪クラブの風格」

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Getty Images

前身の日立製作所時代から37年ぶりとなる天皇杯を制覇した柏レイソル前身の日立製作所時代から37年ぶりとなる天皇杯を制覇した柏レイソル 奪ったゴールはわずかに1。それでも慌てることなく試合を進め、堅実な守備で逃げ切ってしまうあたりは、昨季(2011年)のJ1王者・柏らしい戦いぶりだったと言っていい。

 4年前と同じガンバ大阪と柏の対戦となった、元日恒例の天皇杯全日本サッカー選手権大会決勝。試合序盤からボールポゼッションで上回り、主導権を握ったのはG大阪のほうである。

 しかも、様子を見るようにパスをつなぐだけだった状態から、20分を過ぎると徐々に柏ゴールへ迫る機会も多くなっていた。25、26分には、ゴール前で遠藤保仁、二川孝広が立て続けに惜しいシュートチャンスをつくり出してもいた。ここからいよいよ、本格的にG大阪ペースになるのではないか。注目の元日決戦は、そんな流れで推移していた。

 潮目を変えたのは、柏のネルシーニョ監督が下した「決断」である。

「ガンバから流れを奪えず、攻撃に転じたときリズムを持続できなかった」と振り返る百戦錬磨の名将は、だからこそ「決断が必要だった」と振り返る。試合開始から32分にして水野晃樹に代え、田中順也を投入した場面について、ネルシーニョ監督はこう語る。

「ガンバのDFラインが余裕を持っていたので、もっと警戒させたかった。センターバックとサイドバックの注意を(柏のFWに)引きつけたかった」

 ボールを奪っても前線でボールが収まらず、なかなか効果的な攻撃につなげることができなかった柏は、この交代でリズムをつかみ始める。32分の交代直後に、コーナーキックからDF渡部博文の先制ゴールが決まったのは出来すぎだったとしても、指揮官の"荒療治"が試合の流れを変えたのは間違いない。

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