【Jリーグ】39歳で全試合フル出場。鉄人・服部年宏が語る「サッカー選手としての『運』」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

服部年宏(はっとり・としひろ)。1973年9月23日生まれ。静岡県出身。ジュビロ磐田の黄金時代を築いたひとり。代表歴も豊富で2度のW杯に出場。Aマッチ出場44試合2得点。服部年宏(はっとり・としひろ)。1973年9月23日生まれ。静岡県出身。ジュビロ磐田の黄金時代を築いたひとり。代表歴も豊富で2度のW杯に出場。Aマッチ出場44試合2得点。Jリーグ通算出場試合数のトップは、ヴァンフォーレ甲府の伊東輝悦(536試合/J1=511試合、J2=25試合)だが、実は「隠れ1位」と言われる存在がいる。ジュビロ磐田、日本代表で目覚しい実績を残してきたFC岐阜の服部年宏だ。JFLの出場試合数(2010年の鳥取在籍時)を加えると、通算564試合(J1=381試合、J2=150試合、JFL=33試合)におよぶのである。さらに服部は、40歳を目前にしながら今季も42試合にフル出場を果たした。彼はなぜ、いまだに衰え知らずに戦えるのか。日本サッカー界の"鉄人"と称される男の境地に迫る――。

「サッカーが下手だから続けられた。
少しでも上達したい気持ちがあるから」

――鉄人とは?

「キヌガサ(衣笠祥雄)?」

 来年で40歳になる男は茶化すように答え、顔に皺(しわ)を作った。

 J1で14年、J2で4年、JFLで1年、天皇杯などカップ戦を合計すると、出場回数は662試合に達する。そして39歳で挑んだ2012年シーズンは、驚くべきことに42試合フルタイム出場を果たしている。カズ(三浦知良)、ゴン(中山雅史)、野人(岡野雅行)ら、今季も現役を続けてきたベテランはベンチを温める時間が多く、彼ほど鉄人の称号がふさわしい男はいないだろう。

「でも、本当に実感はないんですよ。自分から『鉄人です』と名乗ることも当然ないですし(笑)。周りが言ってくれるのを、ああそうか、と受け止めるだけですね」
 あくまで淡々と語るのだった。
 
 J2リーグ、FC岐阜に所属する服部年宏(39歳)は、馬齢を重ねてきたわけではない。そのキャリアは栄光に包まれている。

 大学在学中にジュビロ磐田に入団し、1年目で左サイドバックとしてレギュラーをつかむと、黄金時代の担い手のひとりになった。3度のリーグ制覇を含めて、数々のタイトル獲得に貢献した。10代で代表に選ばれた後、1996年のアトランタ五輪に出場し、ブラジルを破る「マイアミの奇跡」を経験。1998年のフランスW杯、1999年のコパ・アメリカ、2000年のアジアカップ、2001年のコンフェデレーションズカップ、2002年の日韓W杯など各主要大会で日の丸を背負っている。

 ただ、鉄人の鉄人たる所以は、トップレベルの戦いを過去にしながら"今を生きている"点にあるだろう。

 あらゆるタイトルを取り尽くした磐田を2006年に退団してから、東京ヴェルディでは主力としてJ1昇格を果たしている。JFLのガイナーレ鳥取ではMVPを受賞し、見事にJリーグ昇格へと導いた。そしてJ2の岐阜では熾烈な戦いを耐え抜き、Jリーグに残留させることに成功。所属するクラブにおいて、彼は常に結果を残してきたのだ。

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