【名波浩の視点】ベガルタ仙台、タイトル奪取のカギは次節にあり!? (2ページ目)

  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 しかしベガルタの先制ゴールは、流れの中で人がうまく連動して生まれた。ボランチの富田晋伍がいいところでボールを受けて、前半からジュビロにとっては嫌な動きを見せていた右サイドバックの菅井直樹が絶妙なタイミングで前線のスペースに抜け出したところにスルーパス。そして菅井がフィニッシュと見せかけて中央へクロス。ファーサイドでフリーの赤嶺がゴールに押し込んだ、とてもきれいな形だった。

 先制ゴールを奪ったベガルタはそれで勢いづいたが、その勢いがつき過ぎてやや前がかりになった。守備でも、激しく行かなくてもいいところで、最後まで行き切ってしまうシーンが増えた。ジュビロの前田遼一や山田大記が前を向いたときは怖いけれども、それ以外はそこまでの迫力がなかったので、ある程度ボールをもたして、相手をじらせば良かったのに、ブロックを崩して激しくチェックにいく選手が目立った。

 加えて、ジュビロが後半25分にFW金園英学を投入したことで、ベガルタの重心は徐々に後方に偏り始めていた。そして先制したあと、今季はずっとコンパクトにやってきたベガルタが少し後ろに人数をかけ始めて、「こういう形は見たことなかったな」と思っていたら、ジュビロに同点ゴールを許してしまった。

 とはいえ、最低限の勝ち点1を持ち帰ることができたのは、決して悪くはない。相変わらず安定した戦いぶりを見せていて、ここまで優勝争いに加われていることが、昨年とは明らかに違う。

 昨季は夏場に勝ち星を挙げられず、ズルズルと順位を下げてしまったが、同じ失敗を繰り返さなかったことが大きい。そのことは、手倉森誠監督が「(夏場に)下がりかけたけど......」と言っていた表現がまさに適切で、一時下がりかけたけど、昨年の経験を生かして、高い順位をキープして持ちこたえることができた。

 それを実現できたのは、守備陣のおかげだ。センターバック、サイドバック、そしてGKの林卓人らの守備の充実が本当に光っている。ジュビロ戦でも、センターバックの上本大海と鎌田次郎からは「前線の選手に仕事をさせないぞ」という空気感がすごく漂っていて、相手の攻撃をことごとく封鎖。彼らのがんばりなしには、優勝も語れないだろう。

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