【Jリーグ】FC東京・ポポヴィッチ監督「攻撃的な姿勢でどんな局面でも相手を凌駕する」 (2ページ目)

  • 藤原 夕●文 text by Fujiwara Yu
  • 早草紀子●撮影 photo by Hayakusa Noriko

 そして、迎えた3月3日のゼロックススーパー杯。すべての不安はそこで払拭(ふっしょく)された。昨季のJ1王者・柏レイソルに対して互角以上の戦いを見せ、意図のある流動的な攻撃で何度もチャンスを演出。後半65分には、新加入のMF長谷川アーリアジャスールが得点をマークした。

 結果は1-2で敗れたものの、明確な課題を得るとともに、「自分たちのサッカー」に大きな手応えを得た一戦となった。

 ポポヴィッチ監督にはもうひとつテーマがある。
「誰が出場しても、目指すサッカーができること。『チームで組織的に戦う』ということは、特定の誰かと誰かのコンビネーションに頼るのではなく、誰とでも良い連係を図れて戦えることだ」

 したがって、「現段階で最も状態のいい選手を起用する」と明言。競争の中で成長をうながしている。

 再び、高橋が語る。
「試合中も相手がどう来るか、と考えるよりも、自分たちのサッカーをやり遂げて勝ちたいという思いのほうが強い。それができなければ、自分のような選手はすぐ外される、という危機感がある」

 また、ポポヴィッチ監督の采配に目を転じれば、迷いのなさが光る。Jリーグ開幕戦の大宮アルディージャ戦では、ボランチの梶山陽平がフィットし切れていないと見るや、試合開始25分でトップ下の長谷川とポジションを入れ替えた。その後、梶山は前線で彼の強みを余すところなく発揮し、選手の個性を活かすことに成功している。

「今は誰が出てもやれると思うし、一体感がある」と長谷川。ここまで、チーム作りが順調に進んでいるのは間違いない。

 もちろん、すべてがうまくいっているわけではない。90分の試合の中でも波があることは事実。第3節のヴィッセル神戸戦では、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)もこなしながらのスケジュールの中、選手の動きが鈍く、目指すサッカーができなかった。粘り強い守備からカウンター2発で勝利したものの、試合後の選手たちは口々に「何もできなかった」「ただ勝てたという試合」と、チームに達成感はなかった。

 それでも、この勝利は「J2での経験が生きていると思う」と羽生直剛は言う。昨季J2の戦いの中で、選手たちは泥臭く勝利をたぐり寄せることの重要性を知った。それが、監督が目指すものとかみ合い、そのうえで一試合ごとに修正を重ねる実直さが、リーグ3連勝につながっているのだ。

 ポポヴィッチ監督はチームが始動してからこう言い続けている。
「理想のスタイルは、どんな局面でも相手を上回り、凌駕すること。相手に合わせるのではなく、相手が我々に合わせるのだ」

 今後もACLを含めた厳しい日程が続き、長いシーズンには紆余曲折があるだろうが、指揮官が思い描くサッカーの片鱗を垣間見せ、チームがいい方向に向かっているのは確か。単なる勝利至上主義ではなく、どれだけ魅力的なサッカーをして勝てるチームへと成長していくのか、期待は膨らむ。

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