【Jリーグ】浦和・ペトロヴィッチ監督「横にボールを運んだって、そこにゴールはない」 (2ページ目)

  • 小齋秀樹●文 text by Kosai Hideki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 縦パスを多く入れるためには、受け手がどれだけマークを剥(は)がせるかなどの動きの質、出し手が蹴るボールのスピードや精度などが重要になる。当然のことだ。だが、より肝要なのは監督がそのプレイをどう評価するかだろう。それは、「チームコンセプト」と言い換えてもよい。例えば縦パスを入れ、カットされる。ミスに終わっても、そのチャレンジが評価されれば選手は再び縦パスにトライする。

 ミシャはチャレンジを評価する監督だ。彼が志向するサッカーではリスクを冒すことが、他のサッカーに比べて随分と許容されている。最終的にミスに終わったとしても、その狙いさえ良ければ、ミシャは「ブラーボー!」と叫んで選手を褒め称える。

「リスクのあるサッカーをしようと思ったら、監督自身がそういった選手の積極的なプレイを後押ししなくてはいけません。例えばそこでミスが起こったとしても、私はそれに対して批判することはありません」

 これは3月17日、J1第2節後の記者会見でのミシャの言葉だ。対戦相手は昨年の王者・柏レイソルで、試合は1-0でレッズが勝利した。

 ディフェンディングチャンピオンを倒したことが、何かの証明になるわけではない。だが、選手たちが自信を取り戻すきっかけとなる勝利だったことは確かだ。

 ミシャのサッカーについて、レッズの選手たちに尋ねると、決まって返ってくる言葉がある。
「監督が広島にいて対戦したときから、広島のサッカーは面白いなと思っていた」

 その面白いサッカーを、彼らは少しずつ自分たちのものとしている。柏戦後はナビスコカップでベガルタ仙台に、リーグ戦でコンサドーレ札幌に勝利した。シーズンはまだ序盤に過ぎず、楽観はできない。だが、練習場にミシャの「ブラーボー!」の声が響く限り、チームは前へと進んでいくはずだ。

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る