【福田正博】横浜マリノスの武器は伝統の強固な守備とセットプレイ (3ページ目)

  • photo by Tokuhara Takamoto/AFLO

トップ下には谷口のほかに小野が起用されることもあったトップ下には谷口のほかに小野が起用されることもあった

 そうなると気になるのは前線⑩⑪で、小野、渡辺、大黒、途中投入のキム・クナンも含めて、FWを固定できずに、ちょっと変わりすぎたかなという印象がある。優勝した柏レイソルは試合ごとに調子のいいFWを出しているという評価がされていたが、マリノスは、うまくいかないと別のFWを起用しているような印象を受けてしまった。

 もちろん、固定しないで選手を競争させることも重要なのだが、一方で、特定のFWを常に出場させることで、チームの軸、攻撃の中心としての責任を負わせて、成長させるやり方もある。

 つまり、「俺が点をとれなければチームが勝てない」と選手が思い、責任を感じるようになるということなのだが、実は選手にとってはこれが最もキツい。自分の調子が悪いから試合に出られないというのは納得できたとしても、自分の好不調の波がチームの結果に直結するという状況は、よりプレッシャーが大きいからだ。

 チームの中で「俺が責任をとるんだ」という覚悟を持てるかどうか。その意味で、日本人FWにはもっと積極的にPKを蹴ってほしい。それが、「自分が責任をとる」ことを実行するやり方のひとつだと思うからだ。

 また、マリノスは2011年の先発メンバーが全員日本人選手ということが多かった。そのため、2012年は外国人枠をどう使うかがポイントのひとつだと思う。その点、マルキーニョスの獲得は大きい。小野ら若手が成長する可能性も増えるだろう。

 マリノスは2011シーズン5位で、優勝したレイソルとの勝ち点差は16。つまりあと5個の勝ち星、勝ち点15ほどを積み上げるために軸となるFWがいることは非常に重要なことだ。

 守備がしっかりと安定しているだけに、ゲームを決められる外国人選手、理想をいえば得点王をとるようなFWがひとりいると大きく変わるはずだ。また、レイソルのレアンドロ・ドミンゲスのような、攻撃の軸になって、攻撃のクオリティを上げる選手、ゲームの流れを変えられる選手も必要だろう。苦しい試合をものにするときに、前線のクオリティが勝負を分けるからだ。

 中村俊輔がケガがちということもあるので、チームの中心として活躍できる選手が育つかどうかも重要になる。あとは、ベテラン選手がいるなかでそれをおびやかす若手が出てくるかどうか。日本人で攻守の軸になる選手が出てきてほしいし、同時に、新体制となるクラブの方針にも注目したい。

プロフィール

  • 福田正博

    福田正博 (ふくだ・まさひろ)

    1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。

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