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サッカー日本代表に禍根 なぜ伊藤洋輝を2試合連続フル出場させなければいけなかったのか

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

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連載第34回
杉山茂樹の「看過できない」

 ブンデスリーガ第27節。バイエルン所属の伊藤洋輝は、代表ウィーク明け初戦となるこの対ザンクトパウリ戦に、後半13分、ラファエル・ゲレイロ(ポルトガル代表)と交代で出場を果たした。

 ところが試合終盤、ケガに見舞われてしまう。そしてタイムアップの笛が吹かれる前にピッチを後にした。右足中骨骨折。以前と同じ箇所を痛めてしまったのだ。今季の出場は絶望的な状況だという。

バーレーン戦、サウジアラビア戦に連続でフル出場した伊藤洋輝 photo by Yamazoe Toshioバーレーン戦、サウジアラビア戦に連続でフル出場した伊藤洋輝 photo by Yamazoe Toshio ご承知のように、伊藤は今季、シュツットガルトからバイエルンに移籍。しかし開幕前、ケガに見舞われたため、シーズンの半分を棒に振ることとなった。バイエルンでのデビュー戦は2月12日のチャンピオンズリーグ(CL)プレーオフの対セルティック戦。この試合に後半37分から12分プラスアディショナルタイム、出場したのを皮切りに、以降は先発出場と交代出場を繰り返していた。ヴァンサン・コンパニ監督は出場時間を管理しながら、伊藤を大切に扱ってきた。

 ベスト8に駒を進めた日本人唯一のチャンピオンズリーガーである。筆者は以前のこの欄で、「日本人初のCL決勝出場者を目指して頑張ってほしい」と原稿を書いている。W杯の組替え戦と言われるCLで決勝に進出することは、W杯の決勝に出場することと同程度の価値がある。

 森保一監督は、目標をベスト8以上としてきたこれまでから、優勝に変えた。身の程知らずの目標だと指摘したくなるが、それはともかく、ならば森保監督は伊藤をより大切に扱う必要性があった。コンパニ監督以上に、である。

 筆者は先述の原稿で、バーレーン、サウジアラビア戦のメンバーに伊藤を招集するべきでないと意見を述べているが、声は届かなかった。メンバー発表記者会見の席上で「W杯の抽選を考えるとFIFAランキングをひとつでも上げる必要がある。W杯本番まで負けていい試合はひとつもない」と山本昌邦ナショナルチームダイレクター(ND)が語気を強める傍らで、森保監督も激しく頷いていた。

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著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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