サッカー日本代表に重大懸念 三笘薫がウイングバックに入れば「サイドバック」は消えゆく運命に (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【選手は布陣によって作られる】

 そして1枠しかないサイドアタッカーの椅子をウインガーが占めれば、SBは行き場を失う。今回、ケガの谷口彰悟に代わり関根大輝が追加招集されるまで、27人中、SB候補は3人(長友佑都、菅原由勢、橋岡大樹)しか選ばれていなかった。その3人にしても長友は純粋な戦力としてもはや難しい選手であるし、橋岡もSB色と同じくらいCB色を感じさせる選手である。SBらしいSBが占める割合が極めて少ない集団と化している。
 
 看過できない問題だ。ウインガーを、ウイングバックという両サイド各1枠しかないポジションで使えば、SBらしいSBは消えていく運命にある。

 森保一監督がこのスタイルを貫けば、大袈裟に言えばSBは不要なポジションになる。4バックのSBとしてプレーしている限り、代表選手に選ばれる可能性は激減する。これは日本サッカー界全体に大きな影響を与える深刻な問題である。そこに問題意識を抱かず、"超攻撃的3バック"だとはしゃぐ姿は能天気。相当におめでたい。

 日本人選手のあるべき指針を示すべきサッカー協会の影山雅永技術委員長はそれでいいのだろうか。筆者が技術委員長なら、ちょっと待てと、森保監督に異を唱えているだろう。選手は布陣によって作られる。ポジションがなければ、その場に相応しい選手は育たないのである。

 思い出すべきは日本サッカーがこれまで辿ってきた経緯だ。

 加茂ジャパン、岡田ジャパン、トルシエジャパン、ジーコジャパンと、日本は4-2-2-2と3-4-1-2のどちらかの布陣で戦ってきた。4-2-3-1が興隆した欧州にあって日本にないものはウインガーだった。

 一方で、中盤は過多に陥っていた。中盤王国と呼ばれたものだ。想起するのはジーコが監督に就任したその初戦、国立競技場で行なわれたジャマイカ戦だ。4-「2-2」―2の「2-2」に小野伸二、稲本潤一、中村俊輔、中田英寿の4人がきれいにボックス型に収まる姿を見て、ファンとメディアは喝采を送った。

 当時、筆者は「世界の流れに逆行している」とウインガーの必要性を説いたのだが、「サッカーは布陣でするものではない」「いまいる人材に適した布陣で戦うべきだ」と、多くの人から反論を浴びた。

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