閑散とした国立競技場でなでしこジャパンが一変 日韓戦で感じたサッカー界の「組織の問題」 (2ページ目)
【「攻撃的」になったサッカー】
オールスターキャストで臨んだにもかかわらず、スタンドには閑古鳥が鳴いた。日韓戦と言えば聞こえはいいが、相手の顔ぶれ、さらにはスタンドの雰囲気に、日韓戦が本来持つ格式をイメージすることはできずじまい。スコアは4-0だが、まるで勝った気がしない大勝劇だった。この日の国立競技場には若い選手を送り込むべきではなかったか。ちぐはぐ感満載の一戦、との印象だった。
日本の布陣は4-2-3-1。佐々木監督代行は5バックを好んだ池田前監督とは180度異なるスタイルの布陣を選択した。「3バック(5バック)は練習していない」とのことだった。
ここが突っ込みどころ、その2である。試合後の会見からも、佐々木監督代行が攻撃的サッカーを好むことが伝わってきた。「攻撃的守備」という言葉を何度か使っていた。だが、あくまでもやんわりと抑制的だった。攻撃的サッカーを宣言したわけではない。
5バックをメインに守備的に戦った池田前監督と、今回4-2-3-1、4-3-3しか練習しなかったという佐々木監督代行。大袈裟ではなく、サッカーはこの日韓戦で一変した。
しかし、佐々木監督代行は女子サッカー委員長だ。女子サッカーの組織で最も高い地位に就く人である。就任は2021年12月。以来3年弱、池田前監督を評価する立場にあった人物だ。
大きな意見の相違を抱えながら、両者は3年近く関係を築いてきたことになる。佐々木監督代行が攻撃的サッカーを明確に打ち出せない理由でもある。それを明らかにすれば、意見の相違は鮮明になる。池田前監督のサッカーを否定することは、委員長としての自分自身を否定することにもつながる。
なぜ、守備的サッカーに傾倒していった池田前監督を放置していたのか。委員長としての意見は伝えなかったのか。責任は重い。方向性、言い換えればサッカー哲学が異なるふたりが、表面的に良好な関係を築いていたとしたら、それもそれで問題なのである。自分の意見をやんわり主張しつつ、前監督に気を遣うのだとしたら、佐々木監督代行は日本的すぎる。
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