サッカー日本代表の意外な落とし穴 遠藤航のバックアップをどうするのか? (3ページ目)

【W杯での連戦を考えるとバックアップは絶対に必要】

西部謙司(サッカーライター)

<遠藤航のバックアップ> 
田中碧(リーズ) 
藤田譲瑠チマ(シント・トロイデン) 
冨安健洋(アーセナル)

 遠藤航が欠場したオーストラリア戦は、田中碧が守田英正とボランチを組んだ。リーズではより後方のボランチとしてプレーしていて、遠藤のバックアップとしてはポジション的にもぴったり。

 ところが同じ位置でプレーしていても、遠藤と田中は特徴が異なる。

 遠藤は守備型、田中は攻撃型だ。攻撃面では遠藤を上回る能力があるが、田中に遠藤の守備力はない。オーストラリア戦で遠藤の穴埋めを直接的にやっていたのは守田で、田中は守田の代役という感じになっていた。完全に役割が分かれているわけではないので、互いに重なるところはあるのだが、田中と守田の場合はふたりで攻守をシェアしているイメージだった。

 パリ五輪で活躍した藤田譲瑠チマも有望だ。ただ、こちらも田中と似ていて、遠藤のバックアップというより守田のバックアッパーかもしれない。守備の対人能力は高いものの、ポジショニングにまだ粗さが見られる。ただ、これから経験を積むことで急速に遠藤のバックアップとして浮上してきそうだ。

 日本代表メンバーでは旗手怜央もいる。ただ、旗手は田中や藤田以上に攻撃型で、どちらかと言えばシャドーのバックアッパーだろう。

 Jリーグから探すと、タイプは遠藤と全く異なるが田中駿太はアンカーとしての能力が高く、DFもこなすユーティリティー性もある。しかし、同じタイプとしては板倉滉、谷口彰悟、冨安健洋、伊藤洋輝、中山雄太がいるので、代表常連組が優先されるだろう。

 守備力のある知念慶、井手口陽介も有力。代表復帰がいつになるかわからないが、佐野海舟はプレースタイルが遠藤に近く、代役としてはうってつけと言える。

 遠藤の役割を守田が担うなら、川辺駿もありかもしれない。得点力のあるボランチとしては川村拓夢、伊藤敦樹に代表経験がある。今季、ポルトガルリーグで8試合5得点の藤本寛也もいる。

 現状ではポスト遠藤の一番手は田中碧。二番手は藤田譲瑠チマ。三番手は迷うが負傷がなければ冨安健洋、冨安が無理なら佐野海舟。今の代表は全体的に攻撃に傾いていて、守田と組むボランチには攻撃力や得点力よりも守備力が優先されるからだ。

 遠藤、守田のコンビは鉄板だが、W杯での連戦を考えるとバックアップは絶対に必要。遠藤を疲弊させてしまった東京五輪の轍は踏みたくない。

著者プロフィール

  • 篠 幸彦

    篠 幸彦 (しの・ゆきひこ)

    1984年、東京都生まれ。編集プロダクションを経て、実用系出版社に勤務。技術論や対談集、サッカービジネスといった多彩なスポーツ系の書籍編集を担当。2011年よりフリーランスとなり、サッカー専門誌、WEB媒体への寄稿や多数の単行本の構成を担当。著書には『長友佑都の折れないこころ』(ぱる出版)、『100問の"実戦ドリル"でサッカーiQが高まる』『高校サッカーは頭脳が9割』『弱小校のチカラを引き出す』(東邦出版)がある。

  • 後藤健生

    後藤健生 (ごとう・たけお)

    1952年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。1964年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、1974年西ドイツW杯以来ワールドカップはすべて現地観戦。カタール大会では29試合を観戦した。2022年12月に生涯観戦試合数は7000試合を超えた。主な著書に『日本サッカー史――日本代表の90年』(2007年、双葉社)、『国立競技場の100年――明治神宮外苑から見る日本の近代スポーツ』(2013年、ミネルヴァ書房)、『森保ジャパン 世界で勝つための条件―日本代表監督論』(2019年、NHK出版新書)など。

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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