サッカー日本代表は誰が監督でも予選突破は確実 史上最強なのに面白く見えない理由
連載第5回
杉山茂樹の「看過できない」
W杯アジア最終予選グループC。日本は2戦2勝、得点12、失点0という圧倒的な成績で首位に立っている。油断大敵。勝って兜の緒を締める必要は大いにあるが、正直、締める気にならない。拍子抜けとはこのことである。多少なりともヒリヒリ、ドキドキしたいファンには、他国の弱体ぶりが恨めしく映っているに違いない。
"死の組"という下馬評に偽りあり、である。日本は過去W杯に7回連続出場している常連国だ。アジア枠が3.5枠だった1998年フランスW杯、開催国の特権で予選を免除された2002年日韓共催W杯を除けば、他の5回はすべて余力を残しながらアジア予選を突破している。さらにアジア枠が4.5から8.5に拡大すれば落選の可能性はほぼ半減する。従来の突破確率を8割強とすれば、これからは9割強だろう。"死の組"という声に素直に耳を傾けたとしても9割はあるわけだ。
予選のたびに招集される豪華な選手の顔ぶれも突破確率の上昇をあと押しする。今季のチャンピオンズリーグ(CL)に出場が期待される日本人選手は13人。UEFAランク1位のプレミアリーグでプレーする選手も5人いる。彼らを含む20人強の欧州組を毎度代表チームに送り込むことができている国は日本だけ。所属クラブの比較でも断トツなのである。選手の実力と出場枠の関係でいえば、日本は世界で最も緩い予選環境に身を置いている国だと言いきることができる。
そう言っては身も蓋もない。盛り上がるものも盛り上がらないと、メディアは今回、「大変さ」を強調したわけだが、2戦を終了した段階でメッキは剥がれ、落選の可能性は限りなくゼロに近づいた。
8.5枠というレギュレーションに変化がない限り、日本のW杯連続出場は今後も伸びるばかりだろう。アジア予選はますますエンタメ性が乏しくなることが予想される。
これは、日本代表の存在意義そのものの危機とも言える。お楽しみがW杯本大会に限られれば、人気の低下は必至だ。
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著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。