なでしこジャパンはパリオリンピックメダル獲得への「大きな壁」アメリカ戦へ ゴールは植木理子&田中美南の一心同体コンビに託す (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko

【準々決勝は一度も勝っていないアメリカとの対戦】

 日本はグループCを2勝1敗の2位で突破し、準々決勝に進出。再び、場所をパリに移して戦うのは、アメリカだ。2011年のワールドカップ制覇時には決勝でアメリカを破ったが、PK戦にもつれ込んでいるため、記録上は引き分けとなっている。したがって世界大会では、日本はまだ一度もアメリカに勝利していない。世界を目指す時、常に日本の前に立ちはだかるのがアメリカなのだ。

 アメリカと言えば、昨年のワールドカップではベスト16で姿を消した衝撃があり、その後の立て直しには手こずっていた印象がある。しかし今年5月に就任したばかりのエマ・ヘイズ監督は、そのカリスマ性(チェルシーでリーグ7度の優勝)でタレント軍団であるアメリカをひと回り大きく成長させたようだ。

 最も変化を遂げたのは攻撃力だ。今大会グループBで3連勝、9得点と、出場チーム中最多ゴールを叩き出している。ケガから復帰したFWマロリー・スワンソンはそのうちの3ゴールをマークし、完全復活。今年4月のShebelieves Cup(シービリーブスカップ)で日本は1-2で惜敗しているが、その時のアメリカとは一段階ステージが上がっている。

 対して日本は苦しい台所事情がある。初戦でDF清水梨紗(マンチェスター・シティ)が負傷離脱し、第2戦は初戦唯一のゴールゲッターMF藤野あおば(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)が古傷の再発で欠場。第3戦ではそれまで奮闘していた19歳のDF古賀塔子(フェイエノールト)がコンディション不良でメンバー外となり、もともと別メニューで調整を続けていた北川、MF林穂之香(エバートン)らが復帰したものの、すでにフィールドのバックアップメンバー全員がピッチに立つという総力戦を強いられている。

 さらには、ここへ来て猛暑がフランスを襲っていることで、当初から懸念されていた疲労の度合いも気になる。準々決勝のキックオフは15時。パリでは最も気温が高い時間帯だ。ただし、ここまで比較的涼しい時間帯に試合をしてきたアメリカが、暑さにどこまで対応できるかは気になる。日本が続けてきた中2日のリカバリー力が実を結んでいれば、見応えのある展開が期待できる。

 アメリカの攻撃力を全員守備で食い止め、ショートカウンターの機会を逃さずに仕留める――日本の勝機はここにある。ワールドカップでは越えられなかったベスト8の壁。アメリカを倒し、この壁を超えれば、悲願のメダルも見えてくるはずだ。

プロフィール

  • 早草紀子

    早草紀子 (はやくさ・のりこ)

    兵庫・神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。在学中のJリーグ元年からサッカーを撮りはじめ、1994年からフリーランスとしてサッカー専門誌などに寄稿。1996年からは日本女子サッカーリーグのオフィシャルカメラマンも担当。女子サッカー報道の先駆者として、黎明期のシーンを手弁当で支えた。2005年より大宮アルディージャのオフィシャルカメラマン。2021年から、WEリーグのオフィシャルサイトで選手インタビューの連載も担当。

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