なでしこジャパンはパリオリンピックメダル獲得への「大きな壁」アメリカ戦へ ゴールは植木理子&田中美南の一心同体コンビに託す (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko

【お互いを支え合ってきたFW同士の絆】

 ブラジル戦で大ブレーキとなった田中を、植木は懸命に支えようとしていた。

「同じFWとして気持ちはすごくわかる。でもブラジル戦に勝てて本当によかった。あそこの勝ち負けで全然違うから。選手たちは(田中が)ゴールを外したとかそんなことは全く思ってないんです。でもそういう結果(敗戦)が伴っちゃうとダメージもあるから......」と、ナイジェリア戦を前に、植木も苦しそうだった。

 というのも植木自身、オリンピック直前のガーナ戦でヘディングシュートを決めたが、代表では昨年9月のアルゼンチン戦以来、ゴールから遠ざかっていたのだ。

「もうホントに長かった! 『ゴールを目指してしっかりと調整していきたいです』が定型文になってましたから(苦笑)」(植木)

 チャンスは来る。そこに動き出していることは間違ってはいない。ウェストハムへ移籍し、守備の割合が多いチームではあるが、だからこそチャンスが来た時の動きは磨きがかかっているはずだった。けれど、決めきれない。その苦しい時期に植木を支えてくれたのが田中だった。

 昨夏のワールドカップでは一心同体。唯一無二の相棒であり、ライバルでもある田中と、スタミナの続く限りプレスをかけ続けた。体力が枯渇するギリギリまでスタミナを使い果たし、残りの時間を互いに引き継ぐ場面も多かった。

 スタメンになれば「出しきってくる」と相手を疲れさせ、交代時には「あとは任せた」とピッチを託す。ふたりならではの信頼関係があったのだ。苦しい時間が長かった植木には、今の田中の心情がわかり過ぎるくらいなのは当然だった。

 ナイジェリア戦では「一緒にゴールを獲りたい!」と語っていた植木。ともにゴールをマークするという意味ではあったが、田中のゴールはある意味、植木と一緒に奪ったゴールに違いない。田中は、植木の位置、ヘディングの威力を熟知しているからこそ、セカンドボールに詰めていけるあのポジションを取れたのだ。

 あとは、植木本人のゴールを待つのみ。大会初戦のスペイン戦は不出場。ベンチで戦況を見守る悔しさがあった分、コンディションは悪くない。

「(味方を)送り出しても(途中から)出されても、普通どこか悔しさがあるものじゃないですか。でも、去年のワールドカップからそういうのがいっさいない。それが今も継続されているんです。これはチームの雰囲気がよくないと絶対にできないこと。チームの勝利は嬉しいけど、でもFWですから、やっぱり自分のゴールで勝たせたいです」

 ナイジェリア戦は、1点目も2点目も、植木が仕留める匂いは漂っていた。オリンピックでチームを勝たせる植木のゴールを、ぜひ、決勝トーナメントで披露してもらおう。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る