五輪オーバーエイジは必要か?(1) 2008年北京・反町康治は「U-23世代ではどうしても足りないところがあった」 (3ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei

【五輪で勝つ戦いは、ひとつ下の世代から】

「最終的にオーバーエイジをひとりも招集しなかったことについて、『五輪世代の経験を積ませられるからいい』と言う人がいれば、『それでは勝ち抜けないのでは』と言う人もいた。

 オーバーエイジの選手がもたらしてくれる経験値は得られなかったけれど、2006年夏のチーム立ち上げから積み上げてきた蓄積値はある。五輪世代だけで戦うことを強みにして、まとまりのあるチームを作ろうとした」

 北京五輪の結果は、グループステージ敗退だった。

 グループステージで対戦したアメリカとオランダは3人、ナイジェリアはひとり、オーバーエイジを加えていた。0-1で敗れたオランダ戦では、オーバーエイジのヘラルト・シボンに決勝点を喫した。

 優勝したアルゼンチンは、DFニコラス・パレハ、MFハビエル・マスチェラーノ、MFファン・ロマン・リケルメがオーバーエイジに指名されていた。バイエルン所属のマルティン・デミチェリス、インテル所属のニコラス・ブルディッソはクラブ側に招集を拒否されたが、パレハをチームに加えた。リオネル・メッシ、アンヘル・ディ・マリア、セルヒオ・アグエロらの五輪世代にオーバーエイジを交えたチームは、2大会連続となる金メダルを獲得したのだった。

「オーバーエイジを招集するかどうかは、突き詰めるとその国の本気度と言える。アルゼンチンとかブラジルは本気でメダルを取りに行くから、必ずと言っていいぐらいにオーバーエイジで代表の主力クラスを呼んでいる。アフリカの国々もそれに近い」

 北京五輪の日本はグループステージで1勝もできなかったが、悔しさを噛み締めた選手たちは日本代表へステップアップしていった。登録メンバー18人のうち9人が、その後のワールドカップに出場している。

 北京五輪を価値ある通過点としたわけだが、反町はうなずくことをためらう。

「北京五輪優勝のアルゼンチンと準優勝のナイジェリアは、2005年のワールドユース(現在のU-20ワールドカップ)でも決勝戦で対戦していた。どちらのチームの選手たちも、北京五輪が初めての世界大会ではない。五輪で勝つための戦いは、ひとつ下の世代から始まっているとも言える」

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