「変化は必要」女子W杯得点王の宮澤ひなた 紆余曲折を経てつかんだ栄光と世界への扉 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・構成 text&photo by Hayakusa Noriko

――サイドだからこそ、仕掛けることもできていたところだったのに、その場所は「よさが消える」と言われて困惑することはなかったですか。

宮澤(スペースに)抜け出したり、ドリブルで仕掛けていったり、というのが当時の自分の売りだったから......仕掛けなきゃ、そこにいる選手としての価値がない。真ん中に入るとよさが見えないじゃないかって思ったりもしました。

 ただ、ベレーザの1年目とかは、怖いもの知らずでガンガン仕掛けて、ゴールも取れていたんですけど、2年目になって自分のプレースタイルに悩み始めると、パスやドリブルのタイミングがズレてきて......。それで「もう一回、自分(のプレー)を思い出したいな」って思ったことが移籍を考えるきっかけでもあったので、"変化"は必要だと思いました。

――中にポジションを取ると、当然サイドにいた時よりも仕掛けていく機会は減りますよね。

宮澤 中にいる時って、(相手と一緒に)ヨーイドン! という意識で前に走り出す時もありますけど、どちらかと言うと(目の前にいる)敵の前に早く入るイメージ。サイドにいてもトラップで相手の前に入ったり、(スペースに)もぐり込んだりとか、そういうことは意識していたので、中にいても一瞬のスピードでイケる感覚は持っていました。

 展開が(どう転ぶか)わからない状況でも、中ではスピードを出す瞬間っていっぱいあるので、サイドとは違う意味で面白かったです。(周囲の)味方を使いながら自分のポジションを取って、裏にも抜けることができるし、いろんな選択肢を持てる。サイドをやってきたから、中のポジションに戻ってのよさを感じました。

――代表ではまたサイドのポジションを任されることになりましたが、昨夏のワールドカップでは、チームの成長と宮澤選手のプレーリズム、波長がぴったりハマりました。中のポジションを再度経験したことによる影響というか、その効果を感じる面はありましたか。

宮澤 ありますね。もともと出し手のほうがいいというか、ストライカーとしてゴールを決めることよりも、ゴールにつながるプレー、パスを出すほうが好きでしたから、そういう(決定的な)パスを出すために相手(の動き)をズラすプレーとか、中のポジションならではの楽しさを感じていたからこそ、サイドに入った時も「この選手はこのタイミングで(パスが)来るかな」とか、「ちょっと(スペースを)覗いているな」とか、自分の考えと合わせながら"今だ!"と思う瞬間があったりして。中でプレーしてきた経験が、あのワールドカップではサイドでうまく出せたのかなと思います。

――あの時の好調さは、現地にいた際にも「自分ではよくわからない」と言っていましたが、かつてないほどの手応えがありましたか。

宮澤 なでしこジャパンのメンバーとして出場した世界大会はあの時が初めてで、まずは「楽しもう!」と思って臨んでいました。もちろん、前の選手として「点がほしい!」という気持ちもありましたけど、まさかあそこまでゴールが入るとは(笑)。

 得点を決めた時、直感がすごく働いていたんです。「今(パスが)来る!」とか「今走れば」とか、周りのみんなもゴールに向かっている意識のなかで、それがかみ合う瞬間がわかった。そういう時に、実際にゴールにつながっていたので、点を決めたあとは鳥肌が立っていました。

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