パリ五輪がかかるイラク戦でもカギに 群を抜く荒木遼太郎が「世界」向きの理由 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【ライン間のプレーで傑出】

 しかし、ひとり群を抜いているのは、荒木遼太郎だと言える。パリ五輪予選の前哨戦となったウクライナ戦でも、トップ下に近いインサイドハーフとして攻撃を牽引していたが、ゴールに向かう迫力があって、抜群のセンスを感じさせた。

「荒木はパス精度が高いし、スペースで受けるうまさもあるから、自然とボールが集まる」(藤田譲瑠チマ)

 荒木は技量が高く、スペースの感覚に優れ、タイミングの名人で"時間を操れる"。日本代表でいえば、鎌田大地(ラツィオ)、伊藤涼太郎(シント・トロイデン)の系譜を継ぐ選手だろう。「ゴールの予感」を与えられる選手だ。

 先発したUAE戦では、角度のないところから、右足でバーをかすめるシュートを放っている。オフサイドで取り消されたが、ニアサイドに入ってフリックするシュートも非凡だった。韓国戦も平河のパスをライン間で受け、ダイレクトで左へパスし、シュートチャンスを演出。さらに松木玖生からライン間でボールを受けると、反転からGKを脅かす際どいシュートを放っていた。

 いわゆる"ライン間の魔術師"と言える。カタール戦では、藤田からのパスをMFとDFラインの間に呼び込み、一瞬でターンすると、裏に抜けた細谷へ絶好のスルーパスを差し込んでいた。まさにほとばしるセンスだった。

 そのライン間でのプレーは特別である。サイドからのクロス、ニアゾーンの崩し、ミドルシュートなど、いろいろな攻撃パターンはあるが、ライン間で前を向けたらほとんど無敵。塹壕も遮蔽物も一瞬で取り払って、"丸裸の敵"をドリブル、パス、シュートと無制限に攻撃できる感覚だ。

 その点で荒木は傑出している。世界でいえば、ポルトガル代表ジョアン・フェリックス(バルセロナ)に似たファンタジスタと言える。フィジカルや目に見える守備を要求する監督やプレースタイルのもとでは、不遇をかこつことになるかもしれない。一方でボールプレーヤーとして自由を得ると、活躍に際限がない。

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