田嶋幸三が語るハリルホジッチ解任の真実「信頼関係に問題が生じている。目をつぶることはできなかった」 (3ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei

【ロシアW杯で結果が出なかったら責任を取る】

 田嶋には、裁判よりも優先すべきことがあった。

 後任人事である。

 実はこの段階で、森保一の代表監督就任が検討されている。彼は2017年10月からU-21日本代表監督に就いていたが、田嶋と技術委員長の西野朗は「ハリルホジッチさんの次は森保に日本代表も任せる」との青写真を描いていた。本人にも伝えてあった。

「ロシアワールドカップから森保監督で、という考えがなかったわけではない。でも、あのタイミングで猛烈なプレッシャーを受けながらチームを指揮して、結果の責任を負わせてはいけない、という判断でした」

 新監督のもとでの活動は5月末からだ。実質的に1カ月弱でチームを作り直さなければならない。それは、外国人監督の招聘を選択しなかった理由でもある。日本人か外国人かではなく、限られた時間のなかで勝つために最適な人材を探すと、西野に行き着くのだった。

「西野さんは私が解任の決断を下すまで、ハリルホジッチさんをサポートする姿勢を一切変えなかった。自分が代わりにやるといったような発言や態度は何ひとつなかった。監督就任を打診すると『自分はそういう立場ではない』と、最初は断られました。

 でも、西野さんはチームのことをわかっているし、選手とのつながりも大切にする人です。U-19日本代表でワールドユース出場にあと一歩まで迫って、アトランタ五輪出場を果たした。Jリーグでの実績は、言うまでもないですから」

 最終的に、西野はうなずいた。すなわちそれは、田嶋が新たな種類の責任を負う、ということでもあった。

「ロシアワールドカップで結果が出なかったら、自分が責任を取る。ハリルホジッチさんの解任を決めた時点でそう覚悟を固めて、西野さんにお願いしました」

 西野のもとで再生されたチームは、コロンビア、セネガル、ポーランドとのグループステージで1勝1分1敗の成績を残す。セネガルと勝ち点、得失点差、総得点、当該チーム同士の成績のすべてで並び、反則ポイントで上回って2位を確保した。そして、ベルギーとのラウンド16で壮絶な死闘を演じた。

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