日本代表、戦前の想像をも超えた「最悪の結末」 アジアカップでは「実」になることは何もなかった (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 サッカー人気の低迷に危機感を覚える日本サッカー協会にしてみれば、アジアカップで優勝すること、それも、今をときめく三笘や久保を擁するチームで優勝することが重要だったのかもしれない。

 それこそが、話題性を最も大きくする手立てだったからだ。

 しかし、名より実をとるならば、今大会ではベストメンバーにこだわらず、新戦力の発掘、あるいは、選手層の底上げを図るべきだった。

 今大会での毎熊晟矢の活躍は数少ない発見のひとつと言っていいだろうが、町田浩樹や佐野海舟にもそうなる可能性を与えたかったし、他にも元日のタイ戦に出場した選手のなかには、その候補がいたはずだ。

 仮にそれで優勝できなかったとしても、新戦力のなかからひとりでもふたりでもベストメンバーを脅かす選手が出てくれば、大きな収穫となっていただろう。

 それどころか、彼らが主力の不在を感じさせないような活躍を見せ、優勝してしまうようなら、これ以上ない最高のシナリオとなったはずだ。

 ところが、実際はまったく逆の結果になってしまった。

 ベストメンバーの編成にこだわった結果、ただでさえ、優勝したところでどれだけの収穫が得られたかは疑問が残るのに、これほど酷い内容の試合を続けた挙句、その優勝すら逃してしまったのだから目も当てられない。

 もちろん、日本代表としてピッチに立つ以上、選手はやるべきことをやらなければならない。ヨーロッパでのシーズンが進行している所属クラブのことが気になって大会に集中できなかった、などということは言い訳になるはずもない。

 だがその一方で、日常的に世界最高峰の舞台で戦う選手たちに、アジアカップもワールドカップと同じモチベーションで臨んでくれ、というのは無理があることもまた事実だろう。

 実際、ピッチ上の選手たちからは相応の熱が感じられなかった。1点リードで迎えたイラン戦の後半も、ほとんど無抵抗のまま逆転を許している。

 2年後のワールドカップへ向け、もっと有効活用できたはずの大会に、優勝しなければ失望しか残らないような臨み方をし、結果、それを逃した。

 日本代表の話題性や人気を高めるという意味でも、むしろ裏目。昨秋、ドイツを返り討ちにし、注目度が高まってきていたところに自ら水を差した感すらある。

 大会前に想像できる範囲をも超えた、最悪の結末である。

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る