オシムジャパンの有益な敗戦 ザッケローニの采配ミス...サッカー日本代表の成長を証明してきたアジアカップ (3ページ目)
【ザッケローニへの疑念】
だが、今日の日本にとって、これが有益な敗戦であることはその後の事象が物語っている。
2011年のアジアカップはカタールで開催された。日本は前年の2010年南アフリカW杯で、2002年日韓共催W杯に続き2度目のベスト16入りをはたしていた。W杯のアジア予選では4.5という出場枠からはみ出る可能性はほぼなくなっていた。アジアカップでも過去3大会、優勝(2000年)、優勝(2004年)、4位(2007年)。優勝を望むと同時に、W杯本大会でどれほど通じそうかという可能性、すなわちサッカーの内容も問われるようになっていた。
監督はアルベルト・ザッケローニ。日本サッカー界が攻撃的サッカーというひとつのコンセプトに基づいて探し求め、招聘した初めての監督だった。
日本は苦戦しながらも順当にベスト4入りし、準決勝で韓国と対戦した。日本代表の好試合を語る時、このアジアカップでは、決勝のオーストラリア戦とともに引き合いに出される一戦である。
この韓国戦は、1-1のまま延長に突入する。延長前半7分、細貝萌のゴールが決まり、2-1と日本が試合をリードした。するとザッケローニは延長後半の頭、前線の前田遼一を下げ、ディフェンダーの伊野波雅彦を投入した。4-2-3-1を5-3-2に変えたのだ。
5バックで逃げきりを図ろうとした。ところがその間隙を韓国に突かれ、最後の最後に追いつかれてしまう。この采配ミスは、その後のPK戦に勝利したことで、あまり語られることはなかった。これまた延長戦に及んだオーストラリアとの決勝戦が、その後半に李忠成が鮮やかな決勝弾を決めるという劇的な勝利であったことも輪を掛けた。采配ミスは歓喜によってかき消された恰好だった。
2011年アジア杯は、日本が決勝でオーストラリアを破り優勝したphoto by Fujita Masatoこの記事に関連する写真を見る しかし、2014年ブラジルW杯でグループリーグ最下位に終わったザックジャパンを振り返ったとき、真っ先に思い出された試合がこの準決勝だった。大会後、その招聘に奔走した当時の原博実技術委員長にインタビューを行なった。その際、「ザッケローニの目指したサッカーは本当に攻撃的サッカーだったのか」と尋ねたところ、しばらく「うーん」と唸ったままだった。
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