元日の日本代表戦で浮き彫りになった「J1の空洞化」多様化するトッププレーヤーへの道のり (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 また、大宮アルディージャユースからトップに昇格した奥抜は、2022年夏にポーランドのグールニク・ザブジェに期限付き移籍後、2023-2024シーズンからドイツのニュルンベルク入り。三浦は、新シーズンから川崎フロンターレへの移籍が決まっているとはいえ、ヴァンフォーレ甲府の大卒ルーキー。ともにJ1クラブに在籍した経験がない両選手は、当然のことながら、J1でのプレー経験はまったくない。

 新戦力4人のなかで最もJ1出場が多い川村にしても、2018年にサンフレッチェ広島ユースからトップ昇格を果たすも出場機会を得られず、愛媛FCへ期限付き移籍。J2で3シーズンを過ごしている。

 2022年の広島復帰後、J1での2シーズンを戦い終えたが、シーズンを通して主力としてピッチに立ち続けたのは、2023年が初めてのことである。J1で十分な実績を残してきたとは言い難い選手なのだ。

 こうした背景を持つのは、彼ら4人だけではない。

 このタイ戦で先発出場した鈴木彩艶は、浦和ユースからトップ昇格するもJ1での通算出場記録はわずか8試合に過ぎない。

 また、2023年に日本代表デビューを果たした佐野海舟は、米子北高卒業後に町田ゼルビア入り。J2では4シーズンにわたってプレーしているが、J1でのプレー経験は、鹿島アントラーズ移籍後の2023年のみ。現時点では、プロ選手としてのキャリアの多くをJ2で過ごしてきた選手である。

 同じく昨年デビューの毎熊晟矢にしても、桃山学院大卒業後はV・ファーレン長崎入り。J2で2シーズンにわたってプレーしたあと、2022年にセレッソ大阪へ移籍しているため、J1在籍期間はまだ2シーズンしかないのだ。

 日本代表への道が多様化している、と言えば、聞こえはいい。

 高校、あるいは大学を卒業する時点でJ1クラブから声がかかるような選手でなくても、日本代表入りの夢は叶えられる。そんな言い方もできるだろう。

 しかし、裏を返せば、J1クラブに在籍し、実績を重ねることが、必ずしも日本代表入りへの王道ではなくなったということだ。

 そこで起きているのは、J1の空洞化とでも呼ぶべき現象である。

 有望な高卒選手のなかで、J1クラブよりもJ2クラブへ行きたいと望む選手が増えている、という話を聞くようになったのは、もう何年か前のことだ。

 つまりは、J1クラブに入っても試合に出られないのなら、J2クラブに入って実戦経験を得ることで成長につなげたい。そう考える選手が多くなっている、というのである。

 その判断が間違いではなかったことは、図らずも日本代表の新戦力たちが証明している。

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