サッカー日本代表の2023年を福田正博が評価 上田綺世の存在感アップに「久保竜彦と同じレベルの身体能力がある」
■11月のW杯アジア2次予選2連戦に快勝したサッカー日本代表。福田正博氏に2023年の森保ジャパンの成長を評価してもらった。
【攻撃力が落ちない日本代表】
サッカー日本代表は11月のW杯アジア2次予選で、ミャンマーにホームで5-0、シリアにアウェーでも5-0と2連勝した。「格下相手に勝ったくらいで」という意見もあるが、格下といえども何が起きるかわからないのが"本番の難しさ"。そのなかで、相手をしっかり圧倒したことを評価している。
サッカー日本代表の2023年。誰が出ても攻撃力が落ちないようになってきた photo by Sano Mikiこの記事に関連する写真を見る 実はこの2試合を観ながら、日本代表への考えを改めた部分がある。9月のヨーロッパ遠征での親善試合でドイツ代表に勝った頃は、「ピークが来るのが早すぎるのでは?」と心配していた。しかし、それ以降の試合を観ながら、「まだ日本代表はピークを迎えていない」と考え直している。
ここでいうピークとは、コンディションの意味合いではない。力が頂点に達したという意味だが、日本代表の力はまだまだ向上する余地が大きいと感じた。
その理由のひとつは、攻撃陣のメンバーが流動的に起用されているなかで、誰が出場しても攻撃力が落ちないところだ。11月シリーズは三笘薫(ブライトン)を故障で欠き、中村敬斗(スタッド・ランス)、前田大然や古橋亨梧(共にセルティック)も代表活動には不参加。それでもまったく攻撃で手詰まりになることがなかった。
それが可能だったのは、上田綺世(フェイノールト)が存在感を示してくれたからだ。彼にはカタールW杯以前から大きな期待を寄せていただけに、ようやくといった気持ちもある。だが、彼の秘めるポテンシャルはこの程度ではないだけに、今後は三笘や久保建英(レアル・ソシエダ)といった周囲の能力の高い選手たちとの連携力が高まっていった時に、どんな活躍を見せてくれるかは楽しみでならない。
上田に期待する理由は、彼のように最前線でボールをおさめられるFWが日本代表に加われば、戦い方のバリエーションが増えるからだ。以前は大迫勇也(ヴィッセル神戸)がその役割を担っていたが、大迫が代表を外れるようになってから1トップを務めた前田、古橋、浅野拓磨(ボーフム)といった選手はタイプが異なる。彼らの持ち味はスピードでDFラインと勝負するところだ。
ただし、上田にもDFラインの裏を取るスピードはあるし、なにより彼には圧倒的な身体能力の高さがある。その能力の高さは久保竜彦(元サンフレッチェ広島、横浜F・マリノスほか)と同レベルだと思っている。Jリーグが始まって30年が経つが、歴代日本代表のなかで久保竜彦ほどフィジカル能力の高かった選手はいない。
久保竜彦はその高い能力を生かした奇想天外なプレーを見せたのでわかりやすかったが、上田は教科書通りのプレーをすることが多いだけに身体能力の高さは目立たない。だが、上田が何気なくやっているプレーのなかには、実は身体能力が高くなければできないことが多いのだ。
例えば、相手がいながらもジャンプして来たボールを胸でトラップするプレー。これを試合中にやれるFWはJリーグには少ない。久保竜彦、上田のほかは、こうしたプレーができるのはFW起用された時の田中マルクス闘莉王(元浦和レッズほか)くらいだった。
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