日本代表・水沼宏太が見せた「チームを勝たせる」プレー。「アピールは大事ですが...」 (2ページ目)
フォアザチームを貫いてきた
「周りがプレー判断を迷わない動きやパスやポジション取りを」
水沼は常にそう心がけている。実にシンプルで、悪い意味でのエゴがないと言えばいいだろうか。おかげで周りもアジャストが難しくない。
「"結果としてチームを勝たせる"というのが、自分が目指しているプレースタイルですかね」
水沼は自らの信条をそう語っていたが、「チームプレーヤー」の矜持(きょうじ)と言えるだろう。
「僕の場合、とにかく90分間、ひたむきに愚直にプレーするしかない。たとえば、攻守の切り替えのところが緩慢になってきたら、自分が率先して徹底してみたり。評価されづらいかもしれませんけど、頑張り続けることでゴールにも絡める、という姿を見せ続けるだけです」
その姿勢は、代表に選ばれた今も変わっていない。
「アピールは大事ですけど、とにかくこのチームで結果を残さないと先はない。目の前の試合にチームが一体感を持って戦えるか」
その言葉どおり、彼は技術を磨きながら、フォアザチームを貫いてきた。だからこそ所属クラブで不遇となっても、そこから這い上がれたのだろう。昨シーズンは先発出場わずか1試合で、リーグ2位のアシストを記録した。巡ってきたチャンスで一発回答し、少しずつチャンスを広げていった。不屈の戦いのなかで習得した「チームを輝かせる」極意だ。
特記すべき点は、彼の明るさにある。香港戦後も、試合後に多くの選手と積極的に歓談する姿が見られた。コミュニケーションを取ることで、ポジティブな空気を作り出せる。これは試合に勝ったあとだけではなく、負けたあとはなおさらだろう。たとえ自分がピッチに立っていなくても、彼は決して腐らずにチームを鼓舞できるのだ。
欧州組を含めた日本代表でも、水沼の存在は異色だろう。同じポジションのライバルになる伊東純也とも、堂安律とも、久保建英とも異なる。ジョーカーになれるというのか、たとえばリードされた展開で総攻撃に移る時、平常心で右サイドに入り、一発のクロスでアシストすることができる。それを相手に警戒されても、作り直してサイドを崩すだけの力がある。欲に引っ張られず、守備も献身的だ。
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