森保一監督に「過去を否定する余裕」は見られない。招集された代表メンバーの焦点は? (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 中島大介●写真 photo by Nakashima Daisuke

5人は新鮮な選手を選ぶべきだった

 2018年の4月に急遽、代表監督に就任し、壮行試合1試合のみを戦っただけでロシアに向けて旅立った西野朗氏が、いま日本代表の監督を務めていたら、おそらく森保監督とはかなり異なる顔ぶれを選んだに違いない。岡田武史氏、アルベルト・ザッケローニ氏しかり。森保監督とは異なるコンセプトで残り半年を活用しようとしたはずだ。

 過去を否定する余裕が森保監督には見られない。埼玉スタジアムで、ベトナムに1-1で引き分けるという日本サッカー史に刻まれる醜態をさらしたのが3月29日。なぜ2カ月前の時点に戻ろうとするのか。保守的になってどうする、と言いたい。

 出口と入口が常に開いた状態にあるのが代表だ。常に循環する宿命にある。混沌とした状態にあるのが、代表本来の姿なのだ。予選突破を果たし、本番に向けて仕切り直そうとした時、28人選ぶなら、少なくとも5人程度は、常連ではない新鮮な選手を選ぶのが常道というものだ。
 
 大迫勇也に代わって選ばれたと考えるべきは鎌田だ。森保監督は2019年3月のボリビア戦がそうだったように、当初、鎌田を1トップで使っていた。大迫がケガで休んだ試合だが、所属クラブより1列高い位置でプレーしてもやれそうな雰囲気を、鎌田はそこで覗かせていた。大迫も、かつて所属クラブでトップ下としてプレーしていた。つまり大迫と鎌田は、9番と10番の中間で、1列ないし半列下がっても芸を発揮できる器用なセンタープレーヤーという点で一致する。従来の路線で行こうとするならば、1トップを務めた大迫のポジションに、鎌田がそのまま入る可能性は高い。

 4-2-3-1の1トップ下で使われていた鎌田が突如、外された理由は、森保監督がそこに久保を起用したことと、4-3-3への布陣の変更にあった。4-3-3には、鎌田がもっとも得意とする1トップ下はない。インサイドハーフという選択肢もあったが、そこには田中、守田らが台頭していた。ウイングには適性がないので、その結果、選外となったが、今回はそれでも復帰した。森保監督はヨーロッパリーグチャンピオンの肩書きを無視することはできなかった。

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