上田綺世を「大迫の代役」ではない姿で見たい。ベトナム戦は日本代表の本大会に向けた戦いに

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 森保ジャパンが敵地でオーストラリアを下し、カタールW杯本大会出場を決めたことはかけ値なしに喜ばしい。しかし、すでに「アジア」から「世界」という次のフェーズに入ったのだとすると、とても浮かれてはいられないのが現状だ。

 カタールW杯予選は各大陸でし烈な戦いが繰り広げられている。

 ヨーロッパ予選プレーオフでは、かつてのW杯王者イタリアが北マケドニアに道を閉ざされ、大会ダークホースの常連トルコは、健闘虚しくクリスティアーノ・ロナウドを擁するポルトガルに敗れた。そしてその勝者のどちらかは脱落する。すでに4カ国が本大会出場を決めた南米予選では、コロンビア、チリのどちらかが敗退することが決まっており、アフリカ予選ではコートジボワールが最終予選にも進めていない。

 はたしてアジアのチームで、これらの戦いを勝ち抜くことができる国はあるだろうか。日本が勝利を収めたオーストラリアは、無残なまでに数年前より戦力ダウンしていた。アジアサッカーの停滞は深刻だ。

 世界と差があることを前提として踏まえていないと、各ポジションに綻びが見られる森保ジャパンもカタールで一敗地にまみれることになる。その点で、最終予選最後となるベトナム戦はひとつの試金石になるだろう。「世界仕様の森保ジャパン」。新しいモデルは見られるのか。

オーストラリア戦では後半18分から途中出場した上田綺世オーストラリア戦では後半18分から途中出場した上田綺世この記事に関連する写真を見る 単刀直入に言うと、切り札として上田綺世(鹿島アントラーズ、23歳)の名を挙げたい。

 上田はJリーグの日本人ストライカーでは最もゴールの予感を漂わせるひとりだ。とにかく「足が振れる」。それは簡単なことではない。削られ、叩かれ、タックルが目に入る"死に物狂いのせめぎ合い"のなかで、足を振れること自体がひとつの才能である。今シーズンのJリーグでは、上田より試合数の多い外国人FWも含めて、彼は最も多くシュートを放っている。

 特筆すべきは、けた違いのインパクトだろう。的確に、強くボールに力を与えていることで、25メートル以上でも射程距離に入る。強度だけでなく、精度も落ちない。

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