新生なでしこ、殻を破るまでは至らず。だが「泣いた日々」を乗り越え植木理子がエース級の活躍

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko
  • photo by 2022 Asian Football Confederation (AFC)

「チームを勝たせるゴールを決められなかった」----準決勝で先制点、勝ち越しゴールを決めた植木理子(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)は悔しそうに語った。

今大会、なでしこジャパンのなかで最も成長した姿を見せた植木里子今大会、なでしこジャパンのなかで最も成長した姿を見せた植木里子この記事に関連する写真を見る なでしこジャパンはAFC女子アジアカップの準々決勝でタイに7-0で大勝し、早々にワールドカップ出場権を手にしていた。比較的楽なグループリーグで戦い、最終戦の韓国戦は力が拮抗したが、それでも日本にはまだ余裕があった。感覚としては準決勝の中国に対しても同じで、ポゼッションは日本が支配していた。

 ボランチからの展開をケアされ、攻撃のスイッチを入れても2本目3本目の決定的なパスはとおらず、攻撃のテンポも上がらない。うまくくさびが入っても、そこからタテへのボールはひっかかる。相手の好守備だけでなく、日本の粗さも目立っていた。

 それでも植木は2度、中国ゴールをこじ開けた。26分に宮澤ひなた(マイナビ仙台レディース)の速いクロスに、得意のヘディングで後ろにコースを変えた難しいゴールは待望の先制点。2点目は追いつかれた延長で見せた勝ち越し弾。長谷川唯(ウェストハム・ユナイテッド)のフリーキックが壁を越えて落ちてきたところをダイビングヘッドで押し込んだ。

しっかりと試合を締めてさえいれば、植木が理想として追い求めている"チームを勝たせるゴール"を挙げる役割は果たせていたはずだった。その後、終了間際に追いつかれ嫌なムードを残したままPKに入り、流れは中国へ。女子アジアカップ3連覇の道はここで途絶えた。攻守、ゲームコントロール、ベンチワーク......未熟さが目立つ戦いから殻を破るまでに至らず、ディフェンディングチャンピオンは準決勝で姿を消すことになった。

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