日本代表は伊東純也と一蓮托生か。サウジ戦勝利も根本的問題は変わらず

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 日本対サウジアラビアはこれまで14回戦って日本の9勝1分5敗。しかしお互い、アウェー戦で一度も勝利したことがない。日本は3戦全敗で、サウジアラビアは4戦全敗だ。ジッダで戦った前回(2021年10月)は0-1でサウジアラビアの勝ちという結果に終わっていた。

 2-0で日本が勝利した今回の試合は、そうした意味で順当な結果となる。サウジアラビアは過去4戦同様、日本で本領を発揮することができなかった。前回のホーム戦で4-2-3-1の1トップ下を務めたサルマン・アルファラジらをケガで欠いたことが、なにより大きかったと思われるが、日本の寒さ、そして前戦=オマーン戦を終え、来日したのが3日前という強行軍による時差のハンディも、こたえたのではないか。

 とはいえ、試合が始まると、サウジアラビアは日本が備えていない魅力的なプレーを随所に見せつけた。ブラジル人選手を想起させる独得の身のこなし、身体の使い方をベースにした懐の深いボール操作術になにより目を奪われた。ドリブル、ショートパスを交え、ボール支配率を高めながら日本のゴールにヒタヒタと迫ってきた。

 前半32分に南野拓実の先制ゴールが決まるまで、2-0は予想しづらいスコアだった。今回のサウジアラビア戦、もし伊東純也がいなかったら、南野のゴールは生まれていなかった。日本は勝てなかったかもしれないと言いたくなる一戦だった。後半5分、伊東自らが蹴り込んだ鮮やかな2点目のゴールが、それに拍車をかけた。日本がチームとしてつかんだ勝利であることは確かながら、「神様、仏様、伊東様」というフレーズが浮かんでくる勝利であったこともまた確かなのだ。

サウジアラビア戦でも大車輪の活躍で日本の勝利に貢献した伊東純也サウジアラビア戦でも大車輪の活躍で日本の勝利に貢献した伊東純也この記事に関連する写真を見る 前半32分、ハーフウェイライン手前で遠藤航から縦パスを受けると伊東は、右サイドバック(SB)酒井宏樹にボールを預け、トップスピードで右のタッチライン際にスペースを見いだし疾走した。

 その鼻先に酒井が縦パスを拝むように送ると、呼応するように伊東はギアをトップスピードに入れた。相手のCBアリ・アルブライヒを抜き去るように走り勝つと、中をよく見てマイナスに折り返した。これを大迫勇也がスルー。相手DF陣が幻惑されている間に、ボールは南野の足元に収まった。そして先制ゴールが生まれた。

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