長友佑都、批判を封じた「不屈さ」。だが、日本代表の左サイド問題は解決したのか
「魂の叫びが自分自身でも聞こえました!」
サウジアラビア戦後のリモート会見で、長友佑都は熱っぽく語っていた。言葉の躍動感が乏しい監督会見のあとだけに、生き生きと弾む感覚があった。世界の最前線で戦い抜いてきた男の表現なのだろう。
「批判をいただいたことで、火をつけてくれたと思います。ワールドカップの緊張感を思い出し、生きるか死ぬかで、今日できなければ代表での自分はない、と思っていました。それくらいのプレッシャーのほうが、アドレナリンが出て体も動く。20代の時のようなコンディションでキレがあって、目の前の相手に負けない、という僕の原点に返らせてくれたというか......」
長友は前向きで、明るかった。その姿勢がチームに活力を与えていた。最近は低調なプレーで批判を浴びていたが、それを覆す耐性は一流プロフェッショナルの証拠だ。
「批判は僕にとってガソリンというか、追い込まれるほどに逆境で力を発揮できるので。ただ、このままだと燃えてしまうんで(笑)、今日は、水というか栄養というか、称賛がほしいな、と」
実際、一転して長友を評価する声が上がっている。そのプレーは悪くなかった。しかし激賞されるほどだったか。W杯に向けては検証すべき余地がある。
サウジアラビア戦で伊東純也のゴールをアシストした長友佑都この記事に関連する写真を見る サウジアラビア戦の長友は、まず持ち場を守ることに集中していた。対面する右アタッカー、ファハド・アルムワラドに影のように寄り添った。欧州トップレベルのアタッカーとは違い、工夫のない相手だけに、密着することでボールを入れさせていない。
長友の真骨頂が出たのは、相手ペースの立ち上がりだった前半12分だ。
鋭い出足のインターセプトから攻め上がり、左でボールを受ける。クロスはブロックされたが、跳ね返りを再び自ら収め、激しく寄せられながらもマイボールのスローインにした。敵陣深くに攻め込み、チームに活気を与えたと言える。
その後、前半4本のクロスはどれも精度が甘かった。攻撃面ではかつての推進力も影を潜めていたが、左の守備門は堅く閉ざしている。32分の先制シーンも左で防御に成功し、酒井宏樹が裏に出したボールを伊東純也が走り勝ち、折り返しを南野拓実が決めたものだ。
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