ロシアW杯は直前の監督交代が奏功。あの時、なぜハリル解任を強硬に主張したのか (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by JMPA

【ハリル解任は当然の帰結だった】

 続く12月は、東京でE-1選手権が行なわれた。北朝鮮を1-0、中国を2-1でそれぞれ下したハリルジャパンだったが、3戦目の韓国に1-4で大敗した。

 韓国と日本。フィジカル面で勝るのは韓国だ。その韓国に力勝負を挑めば、殴り負けるに決まっている。だが韓国が嫌がる技巧的なサッカーを、ハリルホジッチは好まない。その結果、必要以上にスコアが開くことになった。その1-4は、1-5、1-6に限りなく近い内容だった。

 するとハリルホジッチは、試合後の会見で、大勝した韓国を、目一杯讃えた。実際、ハリルホジッチが好むサッカーと親和性が高いのは日本ではなく韓国だ。韓国代表の監督になったほうが、ハリルホジッチの持ち味は出る。韓国戦は、ハリルホジッチと日本サッカーが、近しい関係にないことをいみじくも証明する大敗劇だった。

 韓国に敗れると、世の中の風当たりは強くなるものだが、その時、ロシアW杯は半年に迫っていた。「解任すべき」という声はさほど高まらなかった。いま代表監督を変えるのはリスキーだとの声が同程度、存在した。

 サッカー協会の田嶋幸三会長も「来年6月のW杯までハリルホジッチをサポートする」と述べている。その一方で選手を責めた。「情けない。代表選手としての誇りを持っているのか」と。だが、W杯を半年後に控えたこの時期、代表入りを狙う選手たちは、試合に出場すれば全力を尽くそうとするものだ。手を抜く選手などいない。

 日本代表としてのプライドがないように見えるのは、プレーに迷いがあるからだ。問題はハリルホジッチが唱えるサッカーにありとするほうが、整合性はある。田嶋会長が解任の判断を下したのは、それから3カ月以上あとのこと。筆者がせっつくのは当然の帰結だった。

 本番まで2カ月あまり。西野ジャパンに与えられたテストマッチは、壮行試合に当たる国内での1試合(ガーナ戦)と、ロシアに向かう途中での2試合(パラグアイ戦、スイス戦)の計3試合しかなかった。

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