日本代表、オーストラリアに辛勝も、パスワーク復活のためにはさらなる変化が必要だ (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 岸本勉●撮影 photo by Kishimoto Tsutomu

 日本はオーストラリアに勝利したが、順位では3位から4位に後退。特に形勢が好転したというわけではない。いばらの道はまだまだ続く。とはいえ、最悪の事態を免れたことは確かである。

 もし引き分け以下ならば、さすがのサッカー協会も森保監督を解任せざるを得なかっただろう。そうならなかった現実が、最終結果にどう反映するか。それは何とも言えないが、この試合に向けて、森保監督が通常のワンパターンのメンバー構成から脱却し、新たな可能性にトライする前向きな姿勢は見て取れた。柴崎岳と鎌田大地をベンチに下げ、守田英正と田中碧をピッチに送り込んだことで、布陣も4-2-3-1から4-3-3へと変化した。

 この変更が奏功したことがオーストラリア戦の勝利の原動力になった、とは思わない。しかし、ひとつのやり方に固執してきたこれまでよりはマシだ。1度これだと思ったら、頑なにそれを貫こうとする、柔軟性に欠ける従来の森保采配とは違っていた。

 この姿勢をどこまで貫くことができるか。効果は簡単に表れにくい。効果が目に見えるのは3試合後だったり、10試合後だったりする。問題はそのアイデアの在庫をいくつ持てるかだ。ほぼゼロに等しい現在から、いくつ積み上げていくことができるか。現在の不成績は、その絶対数が不足していることと関係する。現在はこれまでのツケが表面化している状態にある。

 例えば、グループリーグの2試合目に行なったあの交代が、準決勝で活かされた――W杯本大会やユーロなどの短期集中トーナメントを大会を通して見ていると、実際、そうしたストーリー性のある交代劇に出くわす。名采配には、その背景にテストの絶対的な量が潜んでいる。

 中盤の底に遠藤航、インサイドハーフの左に守田、右に田中を配した4-3-3が、森保ジャパンの今後にどんな活力をもたらすか定かではないが、こちらの目に懐疑的に映ったのは守田、田中ではなく、ブンデスリーガのデュエル王で、毎試合アンカーに座る遠藤のプレーだった。

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