松木安太郎が解説でネガティブ発言を控える理由。そうしないと「競技のおもしろみをスポイルすることになる」 (3ページ目)
「いやいや、ボクが言うことなんて何もないですよ。彼らはほんの少し前まで現役だったので現場の濃い情報を持っていますし、日本代表にも一緒にプレーした選手も多い。そうした鮮度の高い情報は、解説のなかですごく生きていると思いますね」
---- 逆の見方をすれば、引退してから年月が経って、そうした鮮度の高い情報がなくなった時が解説者としての真価が問われるのでしょうね。
「ボクもそうでしたね。現場を離れて間もない頃は、自然と情報が集まるんですよ。でも、長くやっていこうとするなら、解説者としての自分らしさを見つけることが大事だなと思いますね」
---- サッカー解説者のなかには現場に戻るまでの腰掛けというスタンスの方もいると思うのですが、松木さんも現場復帰への色気はお持ちなんでしょうか?
「もちろん、ありますよ。オファーがあれば考えますよ」
---- そうなんですね!?
「年齢が若いと、解説していても現場復帰への思いがにじみ出ちゃうんじゃないかな。そういうのがないってことは、ボクがジジイになってきたってことだと思いますよ(笑)」
---- 言葉についても教えていただきたいのですが、解説者は「ダメなプレーは、こういう理由でダメだった」と指摘する仕事である一方、発言内容が人格否定などのネガティブなものにならないようにも配慮しなければいけない仕事です。SNSでの発信にも通じることだと思うのですが、そのバランスの取り方のコツはあるのでしょうか。
「まず、ネガティブな意見は最小限にしたいと心がけています。極端な話をすれば、ゴール前でフリーでボールをもらってシュートを外せば、『なんで外すんだ!』と思いますよ。でも、わざと外す選手はいないし、『まさか!?』と思うことが起きるのがサッカー。それが起きるたびにネガティブな発言をしていたら、競技のおもしろ味をスポイルすることになっちゃう。
そうなるよりは、応援の気持ちを持って、次の機会にはいいプレーを見せてくれることを期待する。そういうポジティブなスタンスのほうが、中継を見てくれている人たちに気持ちよく試合に入り込んでもらえるんだと思っています」
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