中澤佑二が語る日本代表。「フロンターレとマリノスの中からもっと選ばれてもいい」 (4ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by ロイター/アフロ

 中澤が心配するこれからのJリーグだが、リーグ戦はマリノスが首位のフロンターレを猛追している。

「いいですねぇ(笑)」

 古巣の急上昇に満面の笑みを浮かべる中澤さんだが、好調の要因についてどう分析しているのだろうか。

「(ケヴィン・)マスカット監督に代わったからというよりも、むしろ継続してきたサッカーの質が上がってきたと思いますね。優勝した時のベースを作った喜田(拓也)、扇原(貴宏)、松健(松原健)らが新しく入ってきた選手とうまく融合しているんですよ。あと、昨年は一昨年優勝したのでだいぶ研究されたうえにケガ人も出て苦しんだけど、今年は補強がうまくいって、攻撃の3人のユニットを2パターン作れるぐらいの選手層になった。さらに90分間、自分たちの判断でゲームをコントロールできている。それらが今の好調の要因かなって思います」

 一方、今年もぶっちぎりで優勝かと期待された川崎フロンターレだが、東京五輪明けのリーグ再開後、2勝2分1敗で福岡に今季初黒星を喫するなど、五輪前ほどの勢いがなくなった。

「フロンターレは、ACLでケガ人が出て、東京五輪後に三笘と田中碧がいなくなったことで鬼木(達)監督は選手のやりくりにちょっと苦労していますね。あと、昨年は縦に早いサッカーをしていて、それがハマったけど、今年はボールを大事にしているところもあって昨年のような強みが薄れた感があるかなと。とはいえ、まだ首位だし、1敗しかしていないので強いんですが、優勝するには三笘と田中碧が抜けた穴を既存の選手と外国人選手の補強でどれだけ埋めていけるかだと思います」

 現在2位のマリノスと3位の鹿島アントラーズの勝ち点差は15。優勝争いは、フロンターレとマリノスの2チームに絞られるだろうが、最終的に優勝するためのポイントは、どういうところになるのだろうか。

「守備の安定と選手層だと思います。これからケガ人が出てくる可能性があるなか、その時に出場してきた選手がそれまでの選手と同じレベルのパフォーマンスを発揮できるか。チームとしての総合力を落とさずに戦えるか。その点でいうとマリノスは、サブに入っている選手の顔ぶれはかなりすごい。後半戦、2チームの競り合いが面白くなるなと思います」

 中澤さんは引退して3年になるが、サッカーだけはなく、今やスポーツ番組のコメンテーターを始め、さまざまな番組に出演し、活動の範囲を広げている。「いろんな世界を知りたいし、たくさん学びたい」と意欲的だ。9月12日に開幕する女子サッカーのWEリーグについても積極的に発信していくようだが、とりわけ今、力を入れているのが「ラクロス」の普及だ。

「娘がラクロスをやっているのもあるんですが、将来、五輪種目になる可能性を求めて、関東関西だけではなく、全国にラクロスが広がればいいなと思います。このラクロスをはじめ、これからもマイナーで困っているスポーツに力を注いでいきたいですね」

 今も見た目は、現役時代とまったく変わらない。サッカーだけではなく、マイナースポーツの普及という新しいチャレンジにストイックに取り組む姿は、2010年南アフリカW杯でベスト16に進出した時のプレー同様に、かなり頼もしい。

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毎週日曜日 15:30〜16:00

スポーツジャーナリスト・佐藤俊とモリタニブンペイが、毎回、旬なアスリートにインタビューするスポーツドキュメンタリー。
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ケガや挫折、さまざまな苦難をものともせず挑戦を続け、夢を追い続けるスポーツヒーローの姿を通じて、リスナーの皆さんに元気と勇気をお届けします。

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