W杯最終予選のベストゴールと言えばコレ! 識者3人が衝撃を受けたトップ3 (3ページ目)

  • photo by Katsuro Okazawa/AFLO

杉山茂樹氏(スポーツライター)

1位=呂比須ワグナーの同点ゴール(※記録上)/日本1-1ウズベキスタン
1998年フランスW杯最終予選(1997年10月11日/ウズベキスタン)

 全8戦中4戦を終えて、グループ3位に甘んじていた日本。この一戦の前、カザフスタン戦で引き分けると、日本サッカー協会は加茂周監督を更迭。コーチの岡田武史を新監督に昇格させた。

 迎えたウズベキスタン戦、日本は先制点を被弾する。そして、時はロスタイムに入ろうとしていた。最終ラインの井原正巳が恥も外聞もなく前方にロビングを蹴り上げると、呂比須ワグナーの頭をかすめたボールは、勢いなく相手GKの元に転がっていった。万事休す。予選敗退を覚悟したその瞬間、事件が起きた。

 ウズベキスタンのGKは、目の前を横切った三浦知良の動きになぜか目を奪われ、ボールはその隙にコロコロとゴールに吸い込まれていった。日本のW杯初出場を語る際に欠かせない、観戦史上最大のラッキーゴール。これ以上ないシュールな光景として刻まれている。


2位=三浦知良の先制ゴール/日本2-2イラク
1994年アメリカW杯最終予選(1993年10月28日/カタール)

 イラクとの最終戦。勝てば悲願のW杯初出場が決まるという大一番だった。待望の先制点が生まれたのは、前半5分。中盤右サイドをドリブルで駆け上がった長谷川健太が前方で構える中山雅史にボールを預ける。そして、長谷川がそのリータンを受けるや、左足を振り抜いた。

 瞬間、強烈なシュートはクロスバーを直撃したが、その跳ね返りに三浦知良が反応。ダイビングで押し込み、日本が先制した。試合前から気勢を上げていた、イラクを応援する白装束の集団は、すっかり沈黙。筆者もこの時ばかりは、楽観的なムードに浸ったものだ。

 のちに「ドーハの悲劇」と語られることになることの顛末を、予想することはできなかった。あの時、一瞬、味わった楽観ムードが今、バー直撃の炸裂音ともどもとても懐かしく感じられる。


3位=岡野雅行の決勝ゴール/日本3-2イラン
1998年フランスW杯最終予選(1997年11月16日)

 岡野雅行はこの一戦まで、W杯最終予選に出場していなかった。いきなり招集されたためか、ルールを知らずにイラン戦に臨むことになった。ゴールが決まった瞬間、または決められた瞬間、試合終了というゴールデンゴールの中身を知らされたのは、自身が交代出場することになった延長戦の直前だった。

 それまで、出番が回ってこないことに不満を抱いていた岡野だが、その事実を聞かされるや、緊張で体の震えが止まらなくなった。案の定、出場するやミスを重ねた。決定機を外すたびに、パスの送り手である名波浩、中田英寿などから激しく叱責されたという。

 悲願のW杯初出場を懸けたプレーオフという重々しい舞台で繰り広げられた、まさに斬るか、斬られるかの大接戦。2-2のスコアからゴールデンゴールで決着した劇的さに加え、その立役者がルールを知らずに試合に臨もうとした、少々能天気な岡野だったというエピソードがまた痛快。ストーリー性満点の決勝ゴールだった。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る