消極的だった森保一監督の選手起用。「目標は金メダル」にふさわしい采配だったのか (3ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 佐藤博之●撮影 photo by Sato Hiroyuki

 その理由について、森保一監督は「選手がいい状態で戦えていたので、多少選手を変えてチームの流れが全部変わってしまう選択をするより、1、2戦を3戦目につなげるほうがチーム力が上がっていくと考えた」と話していた。

 だが、準々決勝以降の戦いを考えると、その選択は消極的なものに映る。

 つまりは、森保監督が「フランスが簡単に勝てる相手ではないのは、スカウティングで確認していた」とも話しているように、実際に行なわれていたのは、何が何でも金メダル、ではなく、万が一にもグループリーグ敗退はしたくない、という選手起用だったのだ。

 結果的に、上田綺世、冨安健洋のケガや、酒井宏樹の出場停止といったアクシデントがいくらかローテーションを後押しする形にはなった。それで結果オーライとなってくれればよかったが、日本がスペインやブラジルを出し抜こうとするには、その程度では甘かったということだ。

 登録メンバーの中に、まったく出場しなかった選手もいる。もっと選手を入れ替えるべきだったのではないか――。

 大会後、そんな質問に対し、森保監督は「日本が勝っていくのに、まだまだ次を見越してとか、(日本の実力は)そういう形で試合ができるところではないと思う」と答えていた。

 単純な実力評価としては、そのとおりだろう。まったくの正論だ。

 しかし、だとすれば、金メダル獲得を目標に掲げる根拠は何だったのか。

「ニュージーランド戦でメンバーを落として、という戦い方ができるほど、そんな決勝トーナメントは甘いものではない。見てもらってわかったと思う」

 森保監督は、そうも話していた。

 しかし、だとすれば、ピッチ上のほとんどの選手が中2日で4試合をこなし、疲弊した状態で勝てるほど、スペイン戦は甘いものではなかったのではないのか。

 実力上位ではない日本が金メダルを手にしようと思えば、決勝から逆算して戦略を立てるしかなかった。むしろ、弱いからこそ、次を見越して戦わなければならなかった。

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