U-24日本代表、決勝トーナメントのキーマン。「沈黙する切り札」の力が必要になる時がくる
3連勝でのグルーリーグ突破が決まったフランス戦後、キャプテンのDF吉田麻也が口にしていた言葉が印象深い。
「今日(フランス戦当日)の午後、(東京五輪の)野球を見ていて」
吉田はそう切り出すと、こんなことを話していた。
「ドミニカが(日本に)勝っていたのに、点を取れるところで走らなかったり、自分たちのミスからピンチを招いたり、やるべきことをやっていなくてドミニカが崩れたのを見て、いい教訓になったな、と」
そして他競技にも目を向け、こうも語った。
「違う競技でも、メダル確実と言われている選手たちが予選敗退したりしているなかで、もう一回集中して気を緩めずやろうという話は(試合後に)した」
もちろん、それは自分自身を含め、チームに向けた言葉ではあっただろう。
だが同時に、もはや大会前とは比べものにならないほどメダル獲得へ期待が高まるなか、楽観ムードが漂う周囲にクギを刺す意味もあったかもしれない。
決勝トーナメント初戦となる、準々決勝の相手はニュージーランド。最新のFIFAランクは122位と、今大会出場国中断然の最下位チームが、まさかの番狂わせを起こした結果だ。ランキングで日本が格上なのはもちろん、客観的に見て、実力上位であることも確かだろう。
しかしながら、周囲に漂う緩んだ空気は、ともすれば選手にも伝わりかねない。吉田は、わずかな油断が生まれる余地すらも排除し、次なる関門へ向かおうとしているのだろう。
とはいえ、キャプテンが言うまでもなかった、のかもしれない。
準々決勝前日、チームの雰囲気を問われたDF旗手怜央は、「3連勝して雰囲気もすごくいい」と言いながらも、こう続けた。
「まだ何もなし得てないという雰囲気も漂っている。ただ(グループリーグを)突破しただけで(金メダル獲得の)目標にはたどり着けていないし、そこを目指していこうという雰囲気にもなっている。僕自身、いい雰囲気だなと感じている」
実際、日本は初戦の南アフリカ戦以来、試合を重ねるごとに成長した姿を見せ、一体感を一層強固なものとしている。
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