U-24日本代表、大勝より特筆すべきは森保采配。フランスを混乱させ「金」へ弾みがついた (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by JMPA

 ユーロ2020を制したイタリアのロベルト・マンチーニ監督は、グループリーグ3試合を終えた段階で、「15分の15」を維持したうえに、登録26人中、第3GKを除く25人をピッチに送り込んでいる。

 ユーロ2016を制したポルトガルのフェルナンド・サントス監督も同様。交代枠と登録選手をフルに使い、出場時間を分け合いながら総力戦で7試合を戦っている。

 フランス戦の前半を2-0で折り返した森保監督が後半、交代カードをどう切っていくかは、極めて重要な問題だった。過去2戦を見る限り、心配があった。

 実際、後半10分に行なわれた酒井と橋岡の交代は、後半頭からでもよかったのではないか。堂安律を下げ相馬勇紀を、遠藤航を下げ板倉滉を入れた交代は後半27分。交代出場の三好が3-0とするゴールを決めた後だった。これも慎重すぎると言えた。もう5分、早い時間に投入すべきだったと考える。

 ただし、過去2戦、板倉はセンターバック(CB)として、相馬は左ウイングとして出場したが、この日は板倉が守備的MFで、相馬が右ウイングだった。この交代を可能にしたのは、複数ポジションをこなす2人の多機能性だ。こう言ってはなんだが、従来の日本代表ではお目にかかることがなかった、ちょっとシャレた交代だった。

 極めつきは後半35分に行なった5人目の交代だった。田中碧を下げて前田大然を投入した、守備的MFと左ウイングの交代だった。ベンチに下げる選手と異なるポジションの選手を投入する、いわゆる戦術的な交代を、森保監督は5人目で初めて行なった。

 ピッチ上はこの瞬間、劇的に変化した。左ウイング旗手怜央のポジションに前田が入ったことで、旗手が左SBへ移動。左SBで先発した中山雄太が、田中のポジション(守備的MF)に移動した。1回の交代で、ピッチの3箇所に異変が生じたのだった。これもオシャレな采配だ。

 フランスに4-0で勝ったことより、特質すべき出来事だと言いたくなる。日本サッカーが、ある意味で世界に追いついた瞬間を見た気がした。

 5人の選手交代を経て、ピッチ上の11人はガラリと一変していた。

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