日韓戦で見えた森保監督が求めるもの。名波浩がその成功例と失敗例を解く (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・構成 text by Asada Masaki
  • 代表撮影:日本雑誌協会

 日本も立ち上がり10分くらいまでは、ハイプレッシャーをかけるわけでもなく、どっちつかずの時間になっていた。でもそれは、様子を見なければいけない時間だったからであって、大きな問題はない。逆にそこで、韓国が何かしら仕掛けていてもよかったと思うが......。

 そうして、前半10分を過ぎたあたりから、日本の選手がどんどんボールへアプローチに行き出した。ボールを奪ったあとも、FW大迫勇也のポストプレーを中心にして、2列目の鎌田大地や伊東純也、ボランチの守田英正らが前を向ける状況が増えてきた。これで、日本が圧倒的に主導権を握れるようになった。

 先制ゴールは前半17分に決まったけど、ゲームを支配するきっかけのひとつになったのは、20分のプレー。この時、日本は自陣左サイドで、初めてテンポよくパスが回り、ボールを右サイドの広いスペースへ持っていくことができた(最後は、右からの伊東のクロスが相手選手に当たり、ゴール前に走り込んだ守田にわずかに合わなかった)。

 また、30分にも敵陣で奪ったボールを右サイドでつないでから左サイドへと持っていき、DF佐々木翔がクロスをあげたシーンがあった(最後はクロスを相手選手がカット)。

 どちらも得点にはつながらなかったけど、ボールを回すテンポが上がった状態で、フィニッシュに向けてボックス内に3枚、4枚と選手が入ってきていた。そういった形で攻撃に迫力が出るようになっていたのが、前半半ばの時間帯だった。

 相手ボランチの間や後ろを狙う意識も、日本のほうが韓国より数段レベルが高かった。狭いエリアでもパスを入れよう。受けたらターンしよう。そういう意識を、みんながきちんと共有しているように見えた。

 それにともなって、周りの選手も、連動してオーバーラップしたり、カットインしてきたり、という形を作って攻撃のスイッチが入った。特に右サイドではそうした展開が多く見られ、時間の経過とともに選手たちが連動していった。

 一つひとつのパスに対する意識も高く、そこには確固たる意図があった。それだけメッセージ性が込められていれば、受け手以外の3人目、4人目の反応も自然と速くなるというもの。今後もこれをやり続けていれば、いい形をたくさん作っていけるのではないだろうか。

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