サプライズ選出や不当な扱いも。外国人監督に翻弄された日本代表の選手たち (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 ハリルホジッチは就任直前、前年の代表戦を片端から動画で確認し、ひとつのリポートまで作り上げていたという。情報を取得する熱量はあった。しかしJリーグでの情報はゼロからのスタートで、日本人を理解するのにも苦労した。

 たとえば選手の性格までは見抜けない。日本人指導者であれば、基礎的な情報に肉付けができるが、外国人指導者には言葉の壁も立ちふさがる。日本人監督が東南アジアの代表チームを率いたら、おそらく同じ現象が起きるだろう。

 結果、ハリルホジッチは理想と現実が合致しなかった。選出した選手の数に比べ、その後も代表に定着した選手の数も少ない。最後まで着地点を見つけられなかったのだ。

 一方、アルベルト・ザッケローニ監督は独自のやり方で情報量の少なさを補おうとした。発足時に選出した欧州組を軸に、メンバーを限定。以来、マイナーチェンジでコンビネーションを高めた。そして自分のシステムに合わない選手を、ほとんど頑なに選出していない。

◆佐藤寿人は「何とかしてくれる」。そのゴールは仲間を勇気づけた>>

 たとえば2012年、JリーグのMVPと得点王をダブル受賞した佐藤寿人は、ピッチに立つ機会を与えられなかった(ジーコ、オシム時代は代表の常連だった)。所属する広島が異色な戦術システムだったこともあって、「機能しない」と判断された。ケガ人のバックアップで、一度招集されただけだ。

 これは、あまりに不条理な扱いと言える。

 ザッケローニは、混乱したくなかったのだろう。限られた情報で作ったチームは軌道に乗っていた。世界を敵に回して戦える目算もあったが、戦いを続ける中で停滞していった。選手たちは「自分たちらしさ」の幻想を抱くようになり、集団としての機能を低下させた。2013年のコンフェデレーションズカップで、イタリアと派手に打ち合いながら3-4で敗れた試合がピークだった。

 ザッケローニは、チームをアップデートするのに失敗した。

2014年のブラジルワールドカップ本大会直前には、一度も選んでいなかったJリーグ得点王の大久保嘉人を選出したが、生かす術を持たなかった。結果、ブラジルでは一敗地にまみれた。情報を限定して結果を出したが、最後は膝を屈することになった。

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