なでしこ、失点時の悪癖は直らず。それでも岩渕真奈が流れを変えた (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 岩渕が投入されると、「ブチさん(岩渕)に早くボールをつけて、(運べる)スペースを空けること」(籾木)を心がけた。そうして岩渕が絶妙なタイミングで受けたボールは、再び動き出すことを怠らない籾木の元に絶妙なタイミングで戻ってきた。

 実際、そこにボールが出なくても、ボールを受けるためのスプリントを岩渕と籾木は繰り返すため、2人が動き出せば必然的にDFはマークせざるを得ない。この相互プレーがアメリカの守備を剥がし、待望の"3人目"の動きにつながった。

 そんな2人が本気で、このアメリカ戦を楽しんでいる――。そう感じたのは67分の攻撃だった。岩渕がドリブルで持ち込んで、ペナルティエリア内へ鋭いパスを送る。阿吽の呼吸と言えるタイミングで反応していた籾木が、相手DFを一枚かわしてシュートを放つ。これは相手にブロックされるも、左サイドから中島が詰めようと、すかさず体ごと投げ出した。

 ボールの出し手の岩渕も、フィニッシャーの籾木も体勢を崩しながら、ギリギリのタイミングで放った一連の流れだった。中島の動きは惜しくもオフサイド。直後の3人は、GKの前に同じような体勢で転がっていた。だが、3人とも笑顔だった。まるで「もうちょっとだったね」とでも言うようにアイコンタクトを交わして、それぞれの位置に戻っていく。これまでの2戦では絶対に見られなかった表情だ。

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