柱谷哲二の最重要ミッションは「監督と選手の仲を取り持つこと」だった (7ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro

 柱谷は、ラモスに何回も「中央突破だけじゃダメだ」と伝えたが、まったく言うことをきかなかった。

「ほんとに困って、これって自分の伝え方が悪いのかなっていろいろ考えました。大学の恩師の授業でコーチング論があって、そこで学んだことを思い出してラモスにどう訴えればいいんだろうって、毎日考えていましたね」

 柱谷は、中央突破を否定するのではなく、そのプレーを認めてラモスの自尊心を守り、許容範囲を広げていこうと考え、提案をした。

「ラモスさん、今8:2で中央突破じゃないですか。それを7:3にしませんか。中央突破がダメなわけじゃない。でも、監督が言うように、点が取れていない中では外からの攻撃も必要だと思うんです」

 柱谷の問いかけにラモスは、何も言わなかった。

 ラモスは、まさか柱谷がそういうことを言ってくるとは思わなかったのだろう。それ以前、「なんでこんなサッカーしなきゃいけないんだ。お前がオフトに言ってこい」と柱谷にイライラをぶつけていたのだ。自分の味方だと思っていた柱谷の要求にラモスは答えなかったが、柱谷はラモスの気持ちは理解できたという。

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