シリア戦、カタール戦は、森保一監督続投か否かを判断する試合になる

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 アジアU‐23選手権。初戦の対サウジアラビア戦で、U‐23日本代表は、バックパスのミスからPKを許し、1-2で敗れた。森保一監督は試合後、通常ではあり得ないミスが起きたことを悔やんだ。

 五輪開催国の特権で、五輪本大会への出場が決まっている日本はこの大会に、オブザーバー的な、他国とは異なる立ち位置で臨んでいる。自ずと、メディアの関心は五輪代表選手選考レースに集まりがちだ。この試合で言うならば、ミスを犯した当該選手の問題として処理される向きがある。

 しかしサッカーはチームスポーツだ。その視点ではチームとしての問題が矮小化されかねない。実際、この失点シーンから、森保サッカーの負の側面を掘り下げていくことは十分可能なのである。

サウジアラビア戦で選手に指示を与える森保一監督サウジアラビア戦で選手に指示を与える森保一監督 この試合、日本の攻勢は食野亮太郎(ハーツ)の同点弾を機に加速していった。支配率は上昇。攻める日本、守るサウジアラビアという構図が鮮明化した。サウジアラビアの攻撃は自ずとカウンター主体になる。日本の最終ラインは、試合を優勢に進めていたにもかかわらず、局所的に緊張感に包まれることになった。

 サウジアラビアは通常、オーソドックスな4バック(4-4-2あるいは4-2-3-1)を敷く。個人技、パスワークを駆使し、中盤を大切にするつなぐサッカーをする。言ってみれば、日本人好みのサッカーをする。

 ところがこの日のサウジアラビアは、日本の布陣を意識したのか、日本と同じ3-4-2-1で臨んできた。ピッチの各所にズレが起きにくい、がっぷり四つのミラーゲームを挑んできたかに見えた。にもかかわらず、両者は(とくに後半)、なぜピッチに大きく異なる絵を描くことになったのか。 

 両者が敷いた3-4-2-1は、うっかりしていると5バックになりやすい守備的と言われても仕方のない布陣だ。後ろが重たいサッカー。守る位置は低い。ボールを奪う位置も当然、低くなる。そこからボールをつないでいこうとすれば、相手ゴールまでの距離は長いので、奪われる危険は増す。リスクを避けようとすれば、攻撃の選択肢は必然、縦に速いカウンター的なものになる。

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