ベレーザが4冠達成。皇后杯決勝の
試合内容に強さの根源を見た!

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 2019年の皇后杯は準決勝以降、各試合が最小得点差で勝敗が決する大接戦。その頂点に立ったのは、日テレ・ベレーザだった。これで、プレナスなでしこリーグ、リーグカップ、そして女子クラブ選手権と合わせて4冠を達成した。

なでしこでも活躍する面々が多く所属する日テレ・ベレーザなでしこでも活躍する面々が多く所属する日テレ・ベレーザ 舞台となったNACK5スタジアム(埼玉・大宮)は、対戦相手である浦和レッズレディースの初優勝を後押ししようと集まったファン・サポーターで埋め尽くされ、ボルテージが最高潮に達した中でキックオフを迎えた。立ち上がりから積極的に攻め立てたのはベレーザ。国内では受けて立つ位置であり、前線から厳しいプレッシングと走力を注ぎ込んでいくベレーザの姿は珍しい光景だった。

 ベレーザに最初のコーナーキック(CK)のチャンスが来ると、ニアサイドにいた田中美南の一撃がゴールネットを揺らしたのは開始7分のことだった。籾木結花の速いボールから、田中が右足を振り抜くタイミングやスピード、スタートからフィニッシュまで実にスピーディ。キックオフからのベレーザの勢いがそのまま反映されたような先制点であり、結果的にこれが決勝点となった。

 開始早々の先制に勢いを増すベレーザが一気に引き離すかと思われたが、その後は浦和が立て直し、試合は攻守が目まぐるしく入れ替わる展開に。その中で浦和の得点源でもある菅澤優衣香に、凄まじい気迫で真っ向から挑んでいたのがベレーザのセンターバック(CB)を任された宮川麻都だった。フィジカルや経験値では菅澤に軍配が上がるが、それでも、低い重心から体を寄せ、振り切られても最後まで足を出し、食らいついていく。コンビを組む土光真代との連係は、カバーリングにも安定感を見せていた。

 そもそも宮川の本職はサイドバック(SB)である。積極的な攻撃参加が武器で、柔軟かつ献身的に守備をこなすことができる。なでしこジャパンにも今年のSheBelieves Cup(2月・アメリカ)でSBとして初招集。ブラジル、イングランドと対戦し、初めてのフル代表の世界に戸惑いながらも、ワールドカップメンバーに滑り込んだ。ただ、本大会で宮川に出番が回ってくることはなかった。

「今の実力じゃ出られないって思っていたので、(ワールドカップから)帰ってきてからベレーザで、もっとがんばろうって思うようになりました」(宮川)

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