2019.12.18

なでしこジャパンは自信を取り戻した。
E-1優勝で東京五輪へ弾み

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 籾木結花(日テレ・ベレーザ)は静かに目を閉じ、時間をかけて大きく二度深呼吸をした。蹴り出されたペナルティキックは韓国GKにコースを読まれていた。しかし、芯を捕らえたシュートは、軌道が狂うことなくゴールネットに突き刺さった。苦しみ抜いた末に生まれた終了間際の決勝弾だった。

終了間際、決勝点となるPKを落ち着いて決めた籾木結花「"ここで決めたらチームが勝てる"とかではなく、自分がボールを蹴ってゴールを決めるという動作だけに集中しました」(籾木)

 4大会ぶりの優勝を決める大一番を前に、トップスコアラーだったキャプテンの岩渕真奈(INAC神戸レオネッサ)、攻撃の柱とも言える長谷川唯(日テレ・ベレーザ)が離脱。この苦境にあって、23歳で"10番"を背負う籾木が奮い立った。

 しかし、決勝ゴールが生まれるまでの88分間は、地元の声援を受ける韓国のハイプレスの前に日本の攻撃は何度も分断された。今大会のなでしこジャパンの課題はまさにここにあった。

 巧みなパスサッカーを封じるには「ハイプレス」。フィジカルに劣る日本への対処法の筆頭に上がる項目だ。相手がアジア勢であれ、欧米勢であれ、日本はまずこのハイプレスに立ち向かわなくてはならない。たとえそれが立ち上がりのわずかな時間でも、相手の勢いに飲まれれば主導権を失うだけにとどまらず、失点も喫してしまいかねないことは、この夏のワールドカップで痛感している。

 ポイントは"剥がし"だ。相手をどれだけ引きつけて、フェイントなのか、意表を突くパスコースなのか、一枚でもマークを剥がすことができれば相手のプレスのリズムは崩れ、そこが突破口となる。

 今大会の第2戦、中国戦でもこの部分はかなり手こずった。ただ、克服の予感はあった。ボールの収まる池尻茉由(水原WFC)、岩渕、長谷川、籾木らの配置を変えながら4-3-3システムで攻撃の活性化と、相手の中盤にギャップを生み出すことにも挑戦した。

 いつもならば、海外チームに揺さぶられる日本が、揺さぶりをかけたのだ。守備には多少の混乱も見られたが、攻撃ではトップに入る選手の特性や相手DFとの兼ね合いによってプレーを柔軟に選択できる新たな形が見えた。

 これまでも、状況に応じて4-4-2から4-2-3-1など、選手の判断で戦い方が変わることは珍しくない。選手たちが対応していくのにそれほど時間は要さないはずだ。