香港戦大勝に隠された森保Jの問題。なぜ攻撃は「右」に偏ったのか (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 そもそもこの日、日本がカウンターで攻撃を仕掛けた回数はほぼ皆無だった。ほぼすべて遅攻。にもかかわらず、とくに左サイドにはボールが回らなかった。真ん中に寄りがちな遅攻だった。森保式3-4-2-1は、遅攻との相性が良好とは言えないのだ。次戦の相手、韓国がどの程度のレベルにあるか、なんとも言えないが、どこまでこのプレーを許してもらえるのか。

 今回招集された選手の中で、一番の目玉選手だった仲川も、そうした流れの中に埋没した。遅攻なのにポジションは真ん中寄り。となれば、ドリブルするスペースはなくなる。快足を発揮する場も失われる。一方で、得意とはいえない、相手に背を向けるプレーを幾度となく強いられることになった。その魅力は森保式サッカーにハマらなかった。結果としてミスキャストになってしまった。

 今季のJリーグを沸かせた横浜FMのアンジェ・ポステコグルー監督は、この試合をどう見ただろうか。ハッキリ言えることは、森保式と横浜FMのサッカーは正反対だということだ。今回のE-1選手権は、横浜FM優勝でJリーグが幕を閉じた直後に行なわれているだけに、両者の違いは鮮明になる。横浜FMのサッカーを攻撃的と言うなら、こちらは守備的だ。

 5-0で大勝すれば守備的には映らない。だが、相手は香港である。日本代表サッカーの方向性はこれまで、攻撃的だったはずだ。そうしたコンセプトに基づいて代表監督探しをしてきた経緯がある。

 代表サッカーはいつから方向転換したのか。森保監督はコンセプトを問われると「3バックも4バックも原理原則は同じ」と繰り返すが、そのひと言で片付けられては困るのだ。しかし、この責任の所在は森保監督ではなく、本来は関塚隆技術委員長にある。協会を代表する立場にある技術委員長として、代表サッカーをどの方向に進ませようとしているのか。監督任せにするなら、技術委員長はお飾りになる。方向性は常にしっかりと正されるべきものだろう。

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