稲本潤一が語るドイツW杯。初戦のオーストラリア戦で裏目に出たこと (4ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun
  • photo by Kyodo News

「前と後ろの(選手の)考えが合わないことというのは、普通にあることなんで、意見をぶつけて調整していけばいいんですよ。でも、それでも調整し切れないときがある。そのときは、監督がどうするのか、ジャッジせなあかん。

 ただ、ジーコは基本、選手に任せてくれていたんでね。そこが、この試合の最後に悪いほうに出てしまった」

 ジーコ監督は「選手が自主的に動いてこそサッカー」という考えから、選手の思いや考えを尊重していた。そのため、選手たちは練習中でも選手同士で議論し、自分たちで戦術を煮詰めてきた。

 また、ジーコ監督は日本代表監督に就任する前、監督経験がなかった。百戦錬磨のヒディンク監督とは違って、追い込まれた状況のなかで、戦術変更や選手交代によって、試合の流れを変えるとか、試合を決めにいくことができなかった。最も重要な場面で、監督経験の差が出てしまったのだ。

 チームは、敗戦のショックを受けて、通夜のような雰囲気になった。バスの中では、誰もが押し黙っていた。稲本は、これまでの日本代表で経験したことがない、重苦しさを感じていた。

「最悪の雰囲気やなぁ......」

 初戦の敗戦で、日本は早くも剣ヶ峰に立たされた。そして、翌日からチームはさらに追い込まれていくことになる。

(つづく)

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