日本代表の選手層を厚くするために、強化試合をどのように戦うべきか (3ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Getty Images

 リーダーシップを発揮できるCBにステップアップするために、植田に必要なのはコミュニケーションスキルだろう。個を高めるのはもちろん大事なことだが、サッカーは一人でやるものではない以上、コミュニケーションを密に取ることも欠かせない。得点差がついたために一概に比較はできないものの、後半から起用された三浦弦太が味方に声をかけながらDFラインを微調整して無失点に抑えたのとは対照的だった。

 その三浦は、昨年10月のウルグアイ代表との強化試合で失点につながる痛恨のミスを犯し、今年3月のボリビア戦を最後に森保ジャパンからは遠ざかっていた。再び代表に招集されるために、所属するガンバ大阪で研鑽を積んできたからこそ、今回のパフォーマンスにつながったのだろう。同じように、浅野や武蔵、植田が、今回のベネズエラ戦での苦い経験を次に生かしていくことに大いに期待したい。

 強豪国の代表チームやクラブでは、同じ選手が3試合続けてパフォーマンスが悪いと、次からは起用されなくなる。だが、日本では5試合は見なければならないと私自身は考えている。日本はまだ強豪国のような選手層の厚さがないからだが、つまり、代表であっても忍耐強く起用し、成長を促さなければならない。

 本来、代表チームとは育成をする場ではない。所属クラブで頭角を現した選手が招集されて結果を残すのがあるべき姿だろう。だが、森保監督は日本サッカーの現実を理解しているからこそ、強化試合で勝利を目指すと同時に、新たな戦力がこれから飛躍するきっかけの場にしたいと考えているのではないか。

 W杯とW杯予選で求められるのは『結果』だ。内容がよくても負ければ得るものはないと言ってもいい。しかし、強化試合の意義のひとつは、勝利を目指す大前提がありつつも、『内容』を積み上げていくことができることだ。森保ジャパンはW杯カタール大会にピークをもっていくのが最大の使命で、強化試合は本番であるW杯で結果を残せるようにチーム力を高めていくプロセスのひとつだ。

 また、クラブチームとは異なり、代表チームは活動時間が限られている。各選手には、代表で経験したことや課題として浮き彫りになったことを、所属チームで取り組んで成長してもらいたい。

 ベネズエラ戦はショッキングな結果だったが、何が足りなかったかは選手それぞれがわかっているはずだ。ここで蒔いた種が、来年以降に大きな実りとなって日本代表に戻ってくることを楽しみにしたい。

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